アリババは2017年11月、直接出資と(子会社を通じた)間接出資の合計で224億香港ドル(約4522億円)を投じて、高鑫零售の発行済み株式の36.16%を取得。さらに2020年10月、280億香港ドル(約5653億円)を追加投資して株式を買い増し、高鑫零售の経営権を取得した。
この買収の背景には、ECとリアル店舗の融合を目指す「ニューリテール」戦略の推進があった。アリババの動きに対して市場の期待も膨らみ、香港証券取引所に上場する高鑫零售の時価総額は2020年に一時1200億香港ドル(約2兆4227億円)を超えた。
しかし現実には、ECとリアル店舗の融合は目に見える相乗効果を出せなかった。2021年以降はリアル店舗の凋落傾向が鮮明になり、高鑫零售の売上高は年を追うごとに減少。2024年3月期の通期損益は16億500万元(約345億円)の赤字に転落した。
ファンドの狙いは不動産か
アリババは2023年3月、主要事業の6分割を柱にした構造改革に着手し、経営資源を「EC」と「AI(人工知能)・クラウド」の2分野に集中する姿勢を鮮明にした。その意味で、今回の高鑫零售の売却は既定路線と言える。
では、経営不振の高鑫零售を買収する徳弘資本の狙いはどこにあるのか。同社の経営陣は、かつてアメリカの投資ファンドのKKRや投資銀行のモルガン・スタンレーに在籍し、アジア地域のプライベートエクイティ(未公開株)投資事業を主導した実績を持つ。
「買い手候補が投資ファンドである場合、高鑫零售の(小売り事業の価値よりも)不動産の価値に注目している可能性が高い」。かつて財新記者の取材に応じた中国の小売業界のベテラン幹部は、そんな見方を示していた。
高鑫零售の2024年9月期の中間決算報告書には、投資用不動産として52億4600万元(約1127億円)、その他の不動産、工場、設備として200億5800万元(約4308億円)の資産が計上されている。それに対して、2024年末時点の同社の時価総額は約237億香港ドル(約4785億円)にとどまっていた。
(財新記者:包雲紅)
※原文の配信は1月1日
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