米国金融政策は新興国次第となってしまった 9月FOMCで2つの深刻な課題が浮き彫りに

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9月は利上げ見送り。しかし、イエレンFRB議長は「10月の利上げもあり得る」とした(ロイター/アフロ)

米連邦公開市場委員会(FOMC)は、9月17日、金融政策の据え置きを決定した。イエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長が記者会見で明らかにしたように、今回のFOMCでは利上げ開始の可能性について議論があった。しかし、「最近の海外経済と金融市場の動向が、米国の経済活動を抑制するかもしれず、さらに短期的にはインフレ率が一段と押し下げられる見込みである」(声明文)との判断から、様子見が決まった。

今後について、イエレン議長は、「10月の利上げもあり得る」と記者会見で答えている。実際、FOMCのリスク判断は引き続き「概ね中立」(声明文)とされ、「内需は強く」「現時点では、米国経済に関する見通しの大きな変化はない」(イエレン議長)。

10月のFOMCまでに発表される雇用や小売売上高などの指標が強さを維持し、製造業企業の業況が安定するとともに、海外経済の持ち直し期待が強まり、金融市場の不安定さが後退するのであれば、同月の利上げに対する金融市場の思惑は強まるだろう。

12月利上げと予想するが、新興国次第で後ズレ

しかし、据え置き決定の理由となった海外経済動向に対する不透明感が払しょくされ、「株安、一段のドル高、信用スプレッドの拡大などによる金融コンディションのタイト化」(イエレン議長)が収まるには、少なくとももう少し時間が必要だろう。

筆者は、中国の経済指標の悪化一巡が11月下旬から12月上旬にかけて確認されることを前提として、12月FOMCでの利上げ開始を予想している。言い替えると、新興国不安が続く限り、利上げ開始時期もまた後ズレしていくだろう。

今回のFOMCでは、2つの深刻な課題が浮き彫りになった。

1つは、上述したように、米国の金融政策が新興国次第となった点である。

イエレン議長が説明した金融コンディションのタイト化の多くは、新興国、特に中国経済に対する金融市場参加者の不安感が源泉である。新興国不安が消えない限り、米国では「足元の指標は良いが、来月には新興国経済の悪化の影響が顕在化するかもしれない」状況が続き、FOMCは利上げに踏み切ることが難しい。

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