ワタミと鳥貴族、勢いの差はどこにあるのか 「居酒屋離れ」に負けない経営手法はある

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財務体質の違い

最後に、鳥貴族とワタミの資産内容を比べてみよう。ワタミはリース資産が507億円もあり、総資産の38%を占める。このワタミのリース資産の多くは中途解約不可のリースであり、中途解約するには、一括で残債を支払わなければならない。住宅ローンを解消するには、借り入れたお金を一括返済するのと同じだ。

このリースも含め、固定資産が総資産に占める割合が高いのがワタミの特徴である。総資産に占める固定資産は鳥貴族で48%、ワタミは85%だ。固定資産の比率が高いと、長期的な財務状況が不安定といえる。

もうひとつ固定資産に関する指標で、固定資産を自己資本(純資産)で割って算出される「固定比率」という指標がある。この指標は、低ければ低いほど良いとされる。鳥貴族は、116%と財務状況が良いといえる水準だが、ワタミは1113%と極めて高い水準だ。

これはワタミが現在の財務状況下では、過剰な設備投資であることを示唆している。つまり、過剰な設備投資が重しとなり、新たな設備投資がしにくい状況や将来の資金繰りを圧迫する可能性すらある。

鳥貴族に死角はあるのか?

今のところ順調に業績が順調に推移している鳥貴族に死角はあるのだろうか。もしかしたら、高品質路線があだとなる可能性も否定できない。たとえば、食材費の高騰だ。天候の変化で、国内からのみ食材を調達しているから、他国からの食材調達に切り替えるといった代替がきかない。

国内の地域によっては代替がきくかもしれないが、たとえば鶏肉の需要が高まったときは、日本全国で業者が鶏肉を確保しようとするため、仕入れ価格が上昇する。実際、鳥貴族の2014年7月期有価証券報告書では、材料か価格の高騰が事業リスクと明記してある。順調に業績が推移している鳥貴族が、企業努力だけでは解決できない外部経済環境が変化したときが、本当の試練なのかもしれない。

李 顕史 公認会計士、税理士

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公認会計士、税理士。一橋大商学部卒。2000年中央青山監査法人(現あらた監査法人)金融部入所。銀行、証券会社、割賦金融などで会計監査と内部統制業務を担当。2010年に李総合会計事務所設立。主に上場会社、金融会社の内部監査・経理・管理会計のコンサルティング業務を提供。

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