ワタミと鳥貴族、勢いの差はどこにあるのか 「居酒屋離れ」に負けない経営手法はある
もちろんメニュー数が多いのは魅力だ。ただ、たくさんのメニューがあると食材の管理は煩雑になる。「何でも一通りそろう」総合居酒屋というカタチを崩さず、安さも追求していくとなると、メニューには中途半端感が出て、ボリュームもクオリティも担保できない。
低価格と高品質にこだわった鳥貴族
鳥貴族の場合は、焼き鳥メニューを充実させ、サイド、ドリンクメニューを絞り込んでいる。看板料理の焼き鳥に調理場スタッフのオペレーションを集中させやすくなり、業務効率が上がる。メニューの特長も出やすい。
鳥貴族の場合は単に安いだけでお客の支持を得ているワケではない。高品質を追求し、良質の国産鶏肉に限定して仕入れを行い、店舗で串打ちすることにこだわっている。
鶏肉は牛肉や豚肉に比べて鮮度劣化が早い。ワタミのような大手総合居酒屋が扱う焼き鳥は輸入鶏肉をセントラルキッチン(食材集中加工工場)で加工するケースが多い。これだと串打ちから店舗で提供するまで1日かかるうえ、在庫も増えて鮮度を保ちにくい。通常の焼き鳥店では、1串当たり30グラムに対し、鳥貴族の看板メニューである「貴族焼」は90グラムと約3倍のボリュームがある。
低価格と高品質は一般的に両立しない。国内で食材調達すると確かに高品質だが、コストがかかる。一方で、低価格のため客一人あたりの粗利が相対的に小さくなるはずだ。筆者も東京都内の鳥貴族を複数店利用した経験があるが、平日・土日問わずにどの店舗も満席で、いつも混雑している印象がある。待ち時間なく入れた経験がほとんどない。
この点、鳥貴族は店舗の大きさを総合居酒屋と比べてコンパクトにまとめている。そこで滞在時間2時間弱という高回転を生み出し、収益を稼いでいるのだ。立地も家賃コストを抑えるために駅前の一等立地ではなく、駅から少し離れたビルの地下や2階などへの出店が多い。
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