ただ、私は仲の良い知人2人を自殺で亡くしている。まったく自死を考えたことがない人が大半だろうが、誰かの些細な一言が、最悪の結論を導くことは申し上げておく。
そして、私は男性アイドルグループの方が女性にたいして性加害を与え、多額の賠償金を支払った事件もとりあげた。この件についても、私は企業が該当男性のCMを削除するのもやむなしと説明した。
その記事でも書いたが、世の中には想像以上に性被害を受けた女性の方々(もちろん女性に限らないし男性の方々も多いだろう)がいる。過去の悲しい思い出がフラッシュバックする可能性がある。
これらの事件で私が述べたことに共通するのは、裁判における判決とか、刑法がどうとか、究極的に悪いのかといった話ではない。企業の立場として、自決の引き金になったり、悲しき過去のフラッシュバックを誘発したりすることを、あえて選択する必要はないということだ。
だから、おそらくこの記事の読者が企業の窓口担当者であっても、おそらくCMは削除したのではないだろうか。
吉沢さんと不法侵入とCM
これらにたいして、もちろん吉沢さんの不法侵入が、なんらかのフラッシュバックをもたらす可能性がないとはいわない。
ただ、この事件が「酔っていました。自宅を間違えました」という単なる間違いだとして、以下の論を進める。
その場合、アサヒビールは起用していたドライクリスタルにおいて「ビールとの新しい付き合い方、ひろがる。」とお酒との適度な接し方を推奨していた。
この場合は、採用していた芸能人が企業メッセージに賛同していなかった、ということだから解消は両者が合意するところだろう。これは程度問題だ。
ただ、あるメッセージを発して、本人がだいぶ異なる行動をして世間を騒がした場合は、降板も両者が合意するに違いない。
というのも、たとえば、みなさんがダイエット食品の宣伝広告担当者だとする。ある芸能人を起用しようと打ち合わせをしたときに「いやあ、でも私ってダイエットは大切だと思うんですけれども、食べすぎて10kg太っちゃうこともあるんですよね」と正直に吐露してくれたらどうだろう。起用するだろうか。
酒のCMでも「いや、ぶっちゃけ、適度な酒との付き合いなんて無理っすよね。俺、芸能人だから破天荒に飲んでパーっとやりますよ!」と事前にクライアントに伝える芸能人がいれば(現代ではいないだろうが)、それは筋が通っている。
「極限までの飲酒を勧めます」というフレーズのCMに出ていたとして、それでもなお降板になったら、それは誰もがおかしいと思うだろう。
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