NHKが「紅白歌合戦」で受信料に言及のびっくり "スタエン抜き"でも盛り上がった印象だが…

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一番驚いたのは、クライマックスで採点を待つ間に司会の鈴木奈穂子アナが言ったことだった。

「今年もNHKはたくさんの番組を放送してきました。この1年間、受信料で支えていただきありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします」

【2025年1月8日19時10分追記】初出時の内容に誤りがありましたので、記述の一部を削除しました。

だがそうお願いしたくなるほど、NHKはいま大変なのだ。2024年11月に発表された中間決算では受信料収入が12%減少し、今年度通期で570億円の赤字の見込み。若い世代のテレビ離れが続き今後も受信料収入は伸びそうにない。現在の経営計画では経費を1000億円削減する予定だ。

ネット業務化には課題が多い

民放はなんとかTVerに活路を見いだそうとしており、視聴数はぐんぐん増えている。NHKもネットを必須業務とする放送法改正が昨年成立し、2025年はいよいよそれを実現する。ネットだけでNHKを利用する人からも受信料を徴収できるのだ。ただ、ネット業務化には課題が多く、聞こえてくるのは「うまく進んでいない」との噂ばかりだ。

人材流出も激しく、ネット業務化に必要な人材がどんどん抜けているとも聞く。ネット業務化にあたりゴタゴタした印象で、「大丈夫かNHK」と言いたくなる。

そもそも、テレビを持たない人がネットでお金を払うほどNHKを見たがるとは思えない。ネット受信料が可能になっても、収入減少の歯止めにはならないだろう。「紅白」のあの豪華なステージを、NHKはいつまで続けられるのか。出演者が減ったり時間が縮小されたりするのは、そんなに先ではないかもしれない。

NHKは新聞業界におもねってネットでは放送と同一のコンテンツしか配信しないと決めてしまった。だが、昨年の選挙で石丸伸二氏や国民民主党が若い世代に支持されたのは、自らYouTubeで映像配信したからで、放送は関係ない。NHKも若い世代の獲得にはネット独自の番組を配信すべきだが後の祭りだ。

鈴木アナのコメントも「こんなに素晴らしい紅白も受信料を払わないと見れなくなりますよ」という意図で言わされたのだろうが、テレビを見ない若い世代にはもちろん届かない。

境 治 メディアコンサルタント

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さかい おさむ / Osamu Sakai

1962年福岡市生まれ。東京大学文学部卒。I&S、フリーランス、ロボット、ビデオプロモーションなどを経て、2013年から再びフリーランス。エム・データ顧問研究員。有料マガジン「MediaBorder」発行人。著書に『拡張するテレビ』(宣伝会議)、『爆発的ヒットは“想い”から生まれる』(大和書房)など。

X(旧Twitter):@sakaiosamu

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