空爆だけではない、ガザを襲う「ゆるやかな死」 ジャーナリストが語る「ジェノサイド」の実態

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アルヘルー氏はイスラエルによるもう一つの人権侵害として「強制的な移動命令」を挙げた。「イスラエル軍はこれまでに200万人以上のガザ地区の住民に避難命令を繰り返し出している。人々は行く当てもなく、砂浜の上にテントを張り、雨が降るたびに洪水の被害に見舞われている」(アルヘルー氏)。

Yousef Alhelou/パレスチナ・ガザおよびイギリス・ロンドンを拠点に活動する独立系パレスチナ人ジャーナリスト、ドキュメンタリー映画監督。新作ドキュメンタリー映画『The Phoenix of Gaza(ガザの不死鳥)』を制作中。予告編はこちら(撮影:筆者)

アルヘルー氏は現在のガザのパレスチナ人の状況について、1948年の「ナクバ」(大惨事)と対比して説明した。イスラエルの建国に伴い、約75万人のパレスチナ人はそれまでの住みかを追われて難民となった。これはナクバと呼ばれる。アルヘルー氏は「今回のイスラエルによる大規模攻撃はナクバ以上に悲惨だ」と表現した。そのうえで「集団的懲罰」「民族浄化」という言葉も用いて、イスラエルによる人権侵害を強く非難した。

アルヘルー氏は欧米や日本をはじめとする国際社会の責任にも言及した。

これまでアメリカやドイツなどのヨーロッパ諸国はイスラエルに武器を供与し、軍事作戦を支えてきたと批判されている。「ガザは外国製兵器の実験場にされている。人々は狭いエリアに閉じ込められ、爆弾を頭の上に落とされている」(アルヘルー氏)。

UNRWA活動禁止法の施行が迫る

日本政府に対しアルヘルー氏は「パレスチナを国家として認めること」「和平プロセスを支援すること」などを求めた。

アルヘルー氏は、イスラエルによって国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が活動停止に追い込まれようとしていることについても、危機感を募らせた。

イスラエル国会は2024年10月28日、イスラエル国内でのUNRWAの活動やイスラエル当局者との接触を禁止する法案を可決。これまで食料や水提供などの人道支援や教育、保健衛生などで重要な役割を果たしてきた国連機関の活動が停止の危機にさらされている。活動を禁止する法律の施行期日である1月下旬は目前に迫っている。

「UNRWAが活動できなくなれば、食料などの支援システムの根幹が破壊されるだけでなく、パレスチナ人が教育や医療を受ける機会も奪われる」とアルヘルー氏は危機感を募らせた。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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