チェジュ航空事故、韓国で指摘される「問題点」 乗客の中には3月に結婚控えていたカップルも

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コロナ禍後には海外旅行熱が高まり、就航数を増やしていたが、滑走路は、仁川国際空港では最大4000㍍、金浦国際空港では3600㍍と比べると2800㍍と30%ほど短いことが指摘されていた。

大型機の就航を誘致する目的もあり、務安国際空港がある全羅南道では2010年から滑走路の延長工事を申請し、2021年、ようやく国土交通省の基本計画に含まれ、3160㍍滑走路を延長する工事が始まっていたが、事故当日は工事のため、2800㍍の滑走路はさらに2500㍍に縮小されていたという。

滑走路の短さが指摘されていた務安国際空港では、滑走路の延伸工事が進められていた(写真:Bloomberg)

ただ、韓国の国土交通省は、滑走路は着陸に十分な長さだったとして事故の原因とは関係がないという立場を明らかにしている。

また、当初、着陸予定だった滑走路とは反対側で着陸を試みたのはなぜかという疑問を呈示されている。一部では、民家のある方向を避けたのではないかという見方も出ているが確かなことはまだ分からない。 

事故の対応指揮を執るトップは前日就任したばかり

済州航空は、整備については不備はなかったと説明した。同機の機長は、空軍出身で、2014年に済州航空に入社。飛行時間も6000時間を超えるベテランパイロットだった。

非常戒厳から政治の混乱も続く中で起きた大惨事に、「もうやりきれない」というため息も聞こえる。この大惨事への対応指揮を執るのは、チェ・サンモク大統領権限代行だ。

チェ氏は副総理兼企画財政相だが、事故が起きる2日前の12月27日、大統領権限代行を務めていたハン・ドクス国務総理も野党から弾劾訴追され職務停止となり、職務を引き継いだばかり。しかも、このチェ代行も弾劾訴追される可能性が高いといわれており、「野党はいったい何がしたいのか」という声も上がる。

チェ代行は、当日すぐに現場に入り、遺族と面会している。全羅南道務安郡を特別災害地域に指定し、国土交通省は、中央事故収拾対策本部を設置するなど、現在のところ着々と収拾措置が進められている。30日、韓国政府はアメリカ当局と合同で事故原因の調査を行うことを明らかにした。

今回の務安国際空港での事故は韓国国内で起きた飛行機事故では、史上最悪の大惨事となった。韓国自治体の空港誘致合戦がうんだ悲劇という見方もでている。

韓国では来年1月4日までを哀悼期間として、全国に犠牲者を悼む場所を設ける予定だ。この事故で亡くなられた方々へのご冥福をお祈り申し上げます。

菅野 朋子 ノンフィクションライター

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かんの ともこ / Tomoko Kanno

1963年生まれ。中央大学卒業。出版社勤務、『週刊文春』の記者を経て、現在フリー。ソウル在住。主な著書に『好きになってはいけない国』(文藝春秋)、『韓国窃盗ビジネスを追え』(新潮社)がある。

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