輪軸不正や脱線、2024年「鉄道トラブル」事件簿 大事故には至らなくても信頼揺るがす事態に

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JR貨物でのデータ改ざん発覚を受け、国土交通省は9月、全国の鉄道・軌道事業者に輪軸の緊急点検を指示。その結果、計91の事業者で圧力が規定と異なるなどの「不適切な事案」があり、さらに計50の事業者では記録の改ざんが確認された。

国交省の発表では、改ざんが確認された鉄道事業者の車両でも安全に運転できないものはなかったとしている。ただ、車輪・輪軸という鉄道の走行を支える部分の組み立て作業で、全国的に不正が発覚した事態は重大だ。

地方鉄道でも相次ぐ事故

事故の発生で不通が続いている鉄道もある。千葉県の第三セクター、いすみ鉄道では10月4日、2両編成の普通列車が走行中に脱線した。乗客乗員105人にけがはなかったものの、同日から全線が不通となったままだ。

いすみ鉄道 脱線 事故車両
10月4日の脱線事故後不通が続くいすみ鉄道。事故車両は線路上には戻されたものの現場付近に停められている=2024年12月(記者撮影)

事故原因は調査中だが、枕木の劣化が一因との見方がある。2013年に同鉄道で起きた脱線事故は枕木の劣化が原因だった。枕木の腐食などによる劣化が引き金となる事故は過去にも、今年11月に2027年度末で休止の方針が示された弘南鉄道大鰐線(青森県)など各地の地方鉄道で起きており、地方ローカル線の保守・維持の困難さが安全面にも影響を及ぼしているといえる。

全国的にはあまり目立っていないが、トラブルが続発しているのが熊本市交通局の路面電車、熊本市電だ。2024年は運行開始100周年の記念すべき年だったが、年明けから赤信号の見落としや脱線、ドアを開いたまま走行するなど15件のトラブルが発生している。有識者による検証委員会が再発防止策をまとめ、年明けに最終報告書を提出する予定だ。

熊本市電
脱線や赤信号の見落としなどのトラブルが相次いだ熊本の市電(記者撮影)

乗客に多数の負傷者が出るような大事故はなかったとはいえ、鉄道への信頼性を損なうようなトラブルが目立った2024年。人手不足が課題となる中、鉄道各社はさまざまな面で合理化や効率化を迫られている。だが、最優先されるべきは輸送の安全であり、鉄道各社が推進する経営の多角化も鉄道業での高い信頼性があってのことだ。安全をおろそかにすることのない運営が求められる。

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小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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