止まらないユーロ安 欧州危機が日本を襲う

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資本増強策には増資もあるが、これも株主価値の希薄化を通じて株式市場を抑圧する。最後の手段である公的資本の注入も、国家財政を一段と悪化させる弊害を伴う。

ECBが頼みの綱

結局、当面の危機を救えるのはECBしかない。資金供給オペの拡充により銀行の資金繰り破綻(金融恐慌)のリスクは大いに低減した。今後の焦点は、景気後退リスクを和らげるため、問題国の国債買い支え増額を含めた量的緩和へ明確に踏み出すかだ。

今のところECBは、ユーロ安やエネルギー価格上昇でインフレ率が高止まりしていることや、問題国の財政規律を緩める弊害を懸念して、大胆な緩和をためらっている。だが早晩、そんなことはいっていられなくなるだろう。

今のままでは景気後退、資産価格の下落によりデフレ圧力が増し、金融システム不安が深刻化するのは必至。年央までに「ECBが動く」公算は大きい。EUも「ユーロ圏共同債」を含め、財政統合への確約を余儀なくされるだろう。ただ、これも危機決着に向けた一里塚にすぎない。

(中村 稔 =週刊東洋経済2012年1月28日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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