北尾吉孝氏は「バイオ・エンジェル」になった SBIがバイオ事業の育成に邁進する理由
窪田さんが開発したその薬、エミクススタト塩酸塩は、現在アメリカの臨床試験でフェーズ2b/3を実施しているところ。もうあと一歩のところまできている。
窪田さんは才能と運に恵まれた人だが、それだけでなく志が高い。人品骨柄も申し分なく、この人に賭けてみよう、と投資を決めた。今年前半の騒動は、ベンチャービジネス経営に対する日米の考え方の違いが背景にある。「経営者と開発者は別でよい。ステージによって変わるべき」という米国式と、「成果を出すまで開発者が全責任を負う」という日本式の考え方の違いだ。ただ、アメリカにはこういった隙を突いて言葉巧みに入り込み、金儲けをしようとする海千山千の輩がいる。これに引っかかってしまった。
窪田さんが相談に来たとき、それがわかった。まったくけしからんことで、すぐに臨時株主総会を開くよう助言し、対立していたオカラガン氏に手紙も書いた。だが言を左右にして株主総会を開こうとはしない。そればかりか、「クボタは能力もないダメなヤツだと社員全員が言っている」「共同研究をしている大塚(製薬)もそういっている」などという。それを文書として出だせと言ってもまったく出てこない。オカラガンの就任以降、ストックオプションなどのインセンティブプランをふんだんに出しているので、役員も皆黙っている。
結局、州の裁判所に訴えて臨時株主総会を開くよう命令を出してもらってようやく臨時株主総会を開くことができた。窪田さんとSBIグループの持ち株を合わせて過半を保有していたので勝てました。
調べてみると、オカラガンという人物はいくつものベンチャーを渡り歩いているが、そのうち2社は潰している。こういう輩に引っかからないようにしないといけない。
日本の大株主は事なかれ主義
――米国で裁判所に提訴するなど難しい案件だったと思いますが、北尾さんの支援であっさり解決に導きました。ここから得られた教訓は。
一件落着はできたが、気になったのは、この騒動が起きた時にほかの大株主や関係する大手企業はまったく動かなかったこと。日本の株主は総じておとなしい。事なかれ主義、日和見主義と言ってもいい。こんな弱腰では、企業対企業の国際紛争に巻き込まれたら、大手自身が対応できずに負けてしまう。
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