「骨の老化」を甘く見る人が知らない"ドミノ骨折" 「骨こそが健康長寿のカギを握る急所」の理由

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血液中のカルシウムが不足すると、細胞に正しく情報が伝わらなくなり、筋肉が痙攣を起こしたり、脈が乱れたりすることもある。血液中のカルシウムが足りなくなると、心臓が止まるのを避けるために、骨からカルシウムが血液中に溶け出し、不足分を補うシステムができている。

人間の体は、実に理にかなった働きをするものだ。

カルシウム不足が及ぼす悪影響

血液中のカルシウム不足が慢性化すると、カルシウムの濃度を回復しようと副甲状腺ホルモンの分泌が増え、骨から過剰にカルシウムが溶け出すことになる。そうすると、骨のカルシウムが奪われ、骨粗鬆症になりやすくなる。

一方で、骨から過剰に溶け出したカルシウムは、心臓や腎臓、肝臓、脳などのあらゆる細胞の中で増加する。例えば、血管の壁にある平滑筋にカルシウムが過剰に貼りついてしまうと、血管が収縮して狭くなる。そこに無理やり血液を通そうと心臓が強い圧力を加えて血液を送るため、高血圧になる。

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また、血管にカルシウムがたくさんたまることで血管が狭くなり、心臓や脳に血液を送る血管が動脈硬化を起こすこともある。骨粗鬆症が心筋梗塞のリスクを高めるといわれるのは、そういう理由だ。

骨が弱くなるから血管が老いるということではなく、骨が弱くなるのも、血管が老いるのも、どちらも「カルシウム不足」が原因で起こる。つまり、カルシウム不足が骨にも血管にも、ひいては全身にも悪い影響をおよぼすということなのだ。

「人は骨とともに老いる」ということをおわかりいただけたであろうか。骨はカルシウムの貯蔵庫であり、その蓄えが減っていくと骨粗鬆症はもとより、溶け出したカルシウムにより高血圧、動脈硬化、糖尿病などさまざまな病気にかかりやすくなる。骨の老化が全身の老化のバロメーターになるといって差し支えないだろう。

折茂 肇 骨粗鬆症財団理事長

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おりも はじめ / Hajime Orimo

公益財団法人骨粗鬆症財団理事長、東京都健康長寿医療センター名誉院長。1935年1月生まれ。東京大学医学部卒業後、1986年東大医学部老年病学教室教授に就任。老年医学、とくにカルシウム代謝や骨粗鬆症を専門に研究と教育に携わり、日本老年医学会理事長(1995~2001年)も務めた。東大退官後は、東京都老人医療センター院長や健康科学大学学長を務め、現在は医師として高齢者施設に週4日勤務する。

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