脱毛「アリシアクリニック」破産前から危険サイン 脱毛サロンの倒産が繰り返される背景事情
今回破産した2つのクリニックの負債前受金比率はどうだったのか。じぶんクリニックの決算書は入手できていないが、アリシアクリニックは2023年4月期の決算書が手元にある。それから算出すると84.3%に達する。前述のとおり、比率が50%を超える企業は0.4%しかない。その中でも突出した企業に位置付けられる財務内容だった。
脱毛サロンの倒産が繰り返される背景事情
繰り返される脱毛サロンの倒産では、泣き寝入りするしかない多くの被害者を見てきた。倒産や事業再生をウォッチする立場ではあるが、多数の被害者を生んでいるにもかかわらず、大半の案件が破産となっていることに憤りを覚える。1~11月のエステティック業の倒産99件のうち、破産は94件(構成比94.9%)と圧倒的に多い。
窮境局面にある企業の債務整理の手段は多岐にわたるが、社会への影響が大きい場合は事業継続と取引先、従業員への影響を最小限にとどめることが必要だ。民事再生などの再建型倒産や計画前事業譲渡はその代表例である。単純な破産では、未消化のサービスへ有効な手段を取りにくくなる。
金融機関による「デット・ガバナンス」が効きにくい業界であることも一因だ。アリシアクリニックの2023年4月期の貸借対照表の借入金はゼロだった。前受金を基に、運転資金を確保していたことが背景にあると思われる。
メインバンク制が薄れてきたとはいえ、企業が窮境局面に陥った際、金融機関の影響力は大きい。収益改善に向けた計画作成の支援や、スポンサーや事業譲渡先を探すサポートなどに対応する金融機関は少なくない。ただ、あくまで金融機関から借り入れがあり、信頼関係が構築できていた場合の話だ。
脱毛サロン業界は、ひとたび経営が破綻すると多くの被害者を生む。だが、外部の目は行き届きにくく、有事の際も的確なサポートにリーチしにくい構造になっている。契約に際しては自身のアンテナを最大限伸ばすことが必要だ。
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