脱毛「アリシアクリニック」破産前から危険サイン 脱毛サロンの倒産が繰り返される背景事情

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情報誌は与信のプロが読者で、読み手は行間を読むスキルに長けている。与信限度額の設定や取引先との契約見直しなど、実務担当者の「読み解き力」を信じ、実名での記事化に踏み切った。

「前受金ビジネス」と日常生活での違和感

個人客を巻き込む大規模な倒産が発生すると、「調査会社は蓄積したデータを使って事前に警鐘を鳴らさないのか」、「後出しで『知っていました』は卑怯だ」といった意見がSNSなどで寄せられる。しかし、無制限な信用情報の発信は、取引相手の離反や事業価値の毀損につながり、事業再生の芽を摘みかねない。

ただ、TSRは寄せられた意見も鑑みて、脱毛サロンをはじめとする、必要資金を借入金でなく前受金で充当している「前受金ビジネス」の動向に関するレポートを作成し、2024年2月13日にホームページで公表した。TSRが保有する決算データを分析すると、約2割の企業が前受金(前受収益含む)を貸借対照表に計上していた。また、全体の0.4%の企業は、総負債に占める前受金の割合(負債前受金比率)が50%以上に達していた。

業種によってビジネスモデルはさまざまで、この比率が高いことが一概に悪いわけではない。ただ、レポートでは「前受金ビジネスは、顧客の増加が続く限り、前受金を元手に積極的に事業拡大を進めることができる。だが、ひとたび顧客が減少に転じると、これまでの投資があだとなり、一気に手元資金がひっ迫する事態になりかねない」とチェックポイントを指摘した。

過去、アリシアクリニックは、テレビCMで積極的に広告宣伝していたが、最近はすっかり見かけなくなった。一般個人向けのサービスで、同業との競合が激しいなか、広告宣伝の減少は新規顧客の獲得に大きく影響する。つまり、「顧客減少」と「手元資金の逼迫」の可能性を告げるサインがあった。こうした日常での違和感も、与信上の重要な情報だ。

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