多様性のない組織が「ジリ貧」になるワケ 「答えのない世界」で稼ぐ力<前編>

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対応が遅れたのは、企業だけではありません。将来の日本を背負って立つ若者を育てる、大学をはじめとした教育機関は、まさに「答えのある世界」でのみ通用する人材の育成に特化し、「答えのない世界」を生き抜く術を、いまだに教えようとはしていません。

現在、私が教鞭をとっているBBT大学を、学長の大前研一氏が創立したのは、「このまま手をこまぬいていると、日本の将来はない!」と大いなる危機感を抱いたからでした。

いまだに「答えのある世界」だと思っている会社の実態

宇田 左近(うだ・さこん)ビジネス・ブレークスルー大学経営学部長。荏原製作所取締役、原子力損害賠償・廃炉等支援機構参与(東京電力調達委員会委員長)、日米医学医療交流財団理事。 マッキンゼー・アンド・カンパニー等を経て現職。インフラ系企業の企業変革、および金融機関の企業変革・組織改革に従事。また医療機関における医療経営革新を継続的に支援。東京電力福島原子力発電所事故調査委員会調査統括等を歴任。

先ほども述べたように、時代はとっくの昔に「答えのない世界」へと突入しています。しかし、現実の世界ではいまだに、「答えのある世界」であることを前提として運営されている組織がたくさんあります。以下では、その特徴を説明していきますので、皆さんが所属している組織に共通する項目がないか、チェックしてみてください。

「答えのある世界」では、「どこかに答えはある」という認識が前提とされています。この考えにのっとった組織では、そのどこかにある答えをいち早く見つけることが重要だと考えられています。

そのため、このたぐいの組織では、より経験を積んだ上司や先輩のほうが、経験の浅い者より正しい判断ができると考えられています。一方で、新しく組織に加わった経験の浅い人の考えは軽んじられる傾向があり、経験の浅いうちは経験者の指示に従って行動するのが正しいとされています。

また、このような組織の場合、国籍、性別、年齢、学歴などの属性が、なるべく似通った人たちで組織を構成したほうが、問題解決が効率的になると考えられています。なぜならば、「こういう場合には、こうなる」という認識を共有しやすいからです。そのため、組織の中で共有されている解決策、前例踏襲策よりよい方策を思いついたりしても、そのことを主張すると「空気の読めないやつ」扱いされてしまいます。

このように、同じ種類の人たちが集まっている組織で、何よりも重要だとされているのが、自分の立ち位置をわきまえて行動することです。同じ社内では、どちらが先に入社したかで、相手との立ち位置が決まってしまいます。

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