多様性のない組織が「ジリ貧」になるワケ 「答えのない世界」で稼ぐ力<前編>

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このたび、「答えのない世界」で答えを創りだすための思考法をテーマに、『プロフェッショナル シンキング』という本を上梓しましたが、ここではそのさわり部分について、いくつかポイントをご紹介したいと思います。

「答えのない世界」で必要なこととは

「答えを創る」ためには、「課題の前では皆平等」という認識に立つことが必要です。上司や先輩といった会社内での立場や地位など、いっさい関係ありません。なぜなら、彼らも正しい答えを知らないからです。逆に、過去の成功体験に凝り固まって、間違った判断を下すリスクも大きいので、彼らの指示を鵜呑みにするのは、むしろ危険な行為なのです。

そのため、上司や先輩から「あれやれ、こうしろ」と指示を受けても、言われたままやるのではなく、「なぜ、それをやるべきなのか?」を明確に聞き出すことが重要です。

上司も先輩も、「答えのない世界」では、正しい答えを知っているわけではありません。しかし、彼らは立場上、部下に指示を出さなくてはいけない状況に置かれ、わからないまま指示を出していることも少なくないので、「おかしい」と少しでも感じたら、必ず「なぜ」と問い返してみるべきです。

人によっては、「バカヤロー、余計なこと聞いてないで、言われたとおりにやればいいんだよ、この半人前が!」などと怒りだす上司もいるかもしれません。もしそんな上司ばかりだったら、その会社にはろくな将来が待っていないので、早い段階で見切りをつけるべきでしょう。

「答えを創る」ために、次に必要なのが、多様なキャリアや背景を持った人間と協業し、彼らの知識・経験を借りて、自由闊達に討議することです。なんといっても正しい答えは存在していないので、思考の範囲をいろいろなところへ広げ、あれもこれもと、さまざまなことを試すトライアル・アンド・エラーが、解決へたどり着くために必要となります。

このとき、自分ひとりだけでは限界があるので、他者の助けが必要となります。その際に、自分と同じようなキャリアや経歴を持った相手だと、結局自分と似たような思考パターンを繰り返すことになるので、思考が広がりません。相手も同じ考えなので、つい自分の考えは正しかったと勘違いすることになります。

ましてや部下は、自分の意見を言わずに「おっしゃることはもっともです」などと言うので、自分は正しいのだという思い込みが固定されます。ですから、協業するパートナーはなるべく、自分とはかけ離れたバックグラウンドを持った人物のほうが望ましいのです。

「答えを創る」のに、思考力以上にカギとなる能力が、行動力です。どうも頭のいい人になればなるほど、行動を起こす前に頭であれこれ考え、正しい答えを導きだそうとする傾向が強いのですが、頭で考えても、それが合っているかどうかは誰にもわかりません。どっちみち答えは自分で創らなくてはいけないので、まずは第一歩を踏み出すことが重要なのです。

四の五の言わずに、まずは、やってみること。どうせやるなら、楽しくやることが重要です。

(撮影:大澤 誠)

宇田 左近 ビジネス・ブレークスルー大学経営学部長

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うだ さこん / Uda Sakon

株式会社ビジネス・ブレークスルー取締役、株式会社荏原製作所取締役、原子力損害賠償・廃炉等支援機構参与(東京電力調達委員会委員長)、公益財団法人日米医学医療交流財団理事。東京大学工学部建築学科卒業、同工学系研究科修士課程修了(工学修士)。シカゴ大学経営大学院修了(MBA)。
マッキンゼー・アンド・カンパニー等を経て現職。インフラ系企業の企業変革、および金融機関の企業変革・組織改革に従事。また医療機関における医療経営革新を継続的に支援。東京電力福島原子力発電所事故調査委員会調査統括等を歴任。

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