宙に浮く韓国の最高権力・大統領制はどこへ? 「捨て身」で弾劾を防いだ大統領だが……

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与党関係者は、韓代表の意向はこの発言に尽きる、と話す。

今回の事態で、李在明(イ・ジェミョン)代表が率いる最大野党「共に民主党」は勢いづく。次期大統領選をいつ迎えるにせよ、このまますぐに突入するわけにはいかない。

さらにもう少し時間的猶予が生まれ、公職選挙法違反ですでに1審で有罪判決を受けた李代表の罪が確定すれば、出馬を阻むことができる。

勢いづく野党に窮余の「責任首相制」

与党内で孤立を深める韓代表らを含め、多くの与党議員らが最も気にするのが早期の与野党政権交代だった。

そんな思いを背に受ける形で韓代表は、混乱下ではなく、平和的に尹大統領にあらゆる権限を手放させることで、世論の理解を得ようと試みた。

そのため韓代表は「尹大統領は退陣前であっても外交を含め国政に関与しないだろう」と述べ、今後は韓首相と密に協議していく考えを明らかにした。

韓代表らが念頭に置いているのは、「責任首相制」とみられる。韓国大統領1人に集中する強力な権限を首相に分散させる制度で、尹大統領が当選後、導入の必要性を訴えていた。

これを援用して、当面は韓首相が韓代表の与党と協力しながら国政運営に当たろうとの考えのようだ。

韓国憲法は「大統領が欠けたり、事故によって職務を遂行することができなかったりしたとき」に、首相がその権限を代行すると定めてはいる。

だが、これらの動きに禹国会議長は「大統領の権限を首相と与党で共同行使しようというのは明白な違憲(行為)だ」と批判。野党の李代表も即座に「与党代表と首相が再び憲政秩序を破壊している」と非難した。

大統領任期を4年にし、再選を認めるという改憲は、もともと野党側でも賛成する声が少なくなかったが、李代表は今それを協議すべき時ではないとして、12月14日に改めて弾劾訴追案を国会で採決し、可決を急ぐべきだと訴えた。

実際に改憲となると、協議には2年程度の時間が必要とも言われ、野党側が「時間かせぎだ」と反発する理由にもなっている。

尹大統領の扱いをめぐり与野党が対立する中、明確に実権を持つ最高権力者が不在という異常な事態が韓国で続く。次の政治指導者の座を狙う候補予定者たちが、大統領選の時期を気にしつつ、韓国政界の混迷は長期化の様相をみせている。

箱田 哲也 朝日新聞記者

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はこだ てつや / Tetsuya Hakoda

1988年4月、朝日新聞社入社。初任地の鹿児島支局や旧産炭地の筑豊支局(福岡県)などを経て、1997年から沖縄・那覇支局で在日米軍問題を取材。朝鮮半島関係では、1994年にソウルの延世大学語学堂で韓国語研修。1999年からと2008年からの2度にわたり、ソウルで特派員生活を送った。

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