「バカ野郎!」罵声が日常の9年半で得た1つの学び 伝説の落語家「立川談志」に最も怒られた弟子

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それにしても、なぜ「狂気」と言えるくらいの気づかいをしたのでしょうか。

談志が怖かったから? もちろんそれもあるでしょう。実際、怒りをあらわにした談志の迫力たるや、いま思い出しても身が縮む思いがします。

でも、本当にイヤなら、師匠の下を去ればいいだけです。そうやって去っていった兄弟弟子はたくさんいました。

だから「そこまでやる」のです

私がこれらの気づかいをやり遂げられたのは、ひとえに師匠に「惚れていた」からです。「惚れた師匠を喜ばせること」が弟子の急務で、そうすることが自分の芸人としての可能性を飛躍的に高めることにつながっていくからです。

そう信じ抜いた者たちのコミュニティこそが立川流であり、落語界そのものなのです。

そしてこの感覚は、おそらくかつての日本ではありふれたモノだったのではないでしょうか。「惚れた対象」にそこまで「気づかい」する覚悟こそ、古来の日本人が持っていた大切な気質だったと思うのです。

先人たちがこの国においてさまざまなモノやコトをつくる際には、地獄のような「気づかい」をやってのけてきたはずです。

少なくとも私たちの中には、そんな血が受け継がれているものと、私は確信しています。

だから私は、本書を書くことにしました。

「そこまでやるんですか?」と問われたら、私は自信を持ってこう答えます。

「いいえ、まだまだ、やり足りないのです」

立川 談慶 落語家・立川流真打

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たてかわ だんけい / Dankei Tatekawa

1965年、長野県上田市生まれ。慶應義塾大学を卒業後、株式会社ワコールで3年間の勤務を経て、1991年に立川談志の弟子として入門。前座名は「立川ワコール」。

数々の「しくじり」から、他の流派なら4年ほどで終えられる前座という修行期間を9年半過ごす。二つ目昇進を弟弟子に抜かれるのも、当時異例の出来事だった。

2000年、やっと叶った二つ目昇進を機に、談志により「立川談慶」と命名。2005年、真打ちに昇進。慶應義塾大学卒で初めての真打となる。

著書に『ビジネスエリートがなぜか身につけている 教養としての落語』(サンマーク出版)、『落語で資本論』『なぜ与太郎は頭のいい人よりうまくいくのか』(以上、日本実業出版社)、『古典落語 面白キャラの味わい方』(有隣堂出版部)、『「めんどうくさい人」の接し方、かわし方』(PHP文庫)、小説家デビュー作となった『花は咲けども噺せども 神様がくれた高座』(PHP文芸文庫)など、多数の“本書く派"。

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