フランス「不信任」でどう転んでも近づく極右政権 国債利回り急騰、来年後半は選挙「臨戦モード」

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来年度予算案が廃案となった場合も、アメリカ型の政府閉鎖に陥る事態は回避される公算が大きい。ひとまず来年度の税徴収を可能にする特別法の議会承認を進めるとみられるが、野党勢もその成立は阻止しない方針を示唆している。

この場合、政令で政府歳出を配分することになるが、議会で承認されていない新たな税徴収や歳出は認められない(憲法47条)。つまり、今年度の予算が来年度予算に引き継がれるだけで、新たな予算の計上はできない。

一方、バルニエ首相と極右が土壇場で歩み寄り、内閣不信任案が否決された場合、政権は存続し、来年度予算も成立する。

だが、今回の一連の予算協議の混乱は、現政権の議会基盤の脆弱性を改めて露呈した。不信任案が可決された場合と同様に、2025年後半に国民議会選挙が解禁された後は、選挙がいつ前倒し実施されてもおかしくない臨戦モードとなろう。

近い将来の再選挙が意識され、フランスの政治不安が続くことになる。首相任命と内閣不信任の繰り返しで、フランスの統治能力が機能不全に陥る場合、マクロン大統領に対する退陣論や現在の政治体制の見直しが俎上に載せられる可能性も出てくる。

前回選挙のように左派と手を組めるか

前回の国民議会選挙では、極右が初回投票でリードしたが、決選投票では左派と中道が候補者を一本化したことで、最終的な極右の獲得議席は伸び悩んだ。

極右の政権奪取を阻止するための選挙協力が奏功したが、決選投票での極右の得票率(37.1%)は左派(25.8%)や中道(24.5%)を大きく上回っていた。そのうえ、議会の最大勢力となりながら、政権を率いる機会を奪われた形の左派は、バルニエ政権やマクロン大統領との対決姿勢を強めている。

次の国民議会選挙で、前回同様に左派と中道が手を組むかは微妙なところだ。その際、極右の求めに応じてバルニエ首相が約束する比例代表の要素を盛り込む選挙制度改正が実現している可能性もある。

極右の政権奪取を阻止する防疫線は確実に弱まっている。

田中 理 第一生命経済研究所 首席エコノミスト

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たなか おさむ / Osamu Tanaka

慶応義塾大学卒。青山学院大学修士(経済学)、米バージニア大学修士(経済学・統計学)。日本総合研究所、日本経済研究センター、モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター証券(現モルガン・スタンレーMUFG証券)にて日、米、欧の経済分析を担当。2009年11月から第一生命経済研究所にて主に欧州経済を担当。

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