フランス「不信任」でどう転んでも近づく極右政権 国債利回り急騰、来年後半は選挙「臨戦モード」

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政権発足当初から、極右がバルニエ政権の存続可否を握る状況にあることは広く知られていた。だが、下院の前倒し選挙は2025年後半まで行うことができず(憲法規定で下院選挙は1年に1回しかできず、前回選挙は6~7​
月実施)、今回の投票で政権を倒しても選挙に持ち込むことはできない。

次の大統領選挙や国民議会選挙での政権奪取を目指す極右は、政治混乱や財政危機を招いたとの有権者の批判を回避するためにも、この段階での政権打倒を目指さないと考えられていた。

ところが極右は、来年度予算案の審議に入ると、内容を自らの要求に沿った形に修正しない限り、バルニエ政権を信任しない可能性を示唆した。

極右が「政権打倒へ方針転換」した理由

極右政党の関係者は、電力税の引き上げ撤回、年金の物価スライドの早期完全導入、外国人に対する医療扶助の削減、欧州連合(EU)予算への拠出金削減などを要求している。

バルニエ首相は11月28日、電力税の引き上げ撤回、不法移民に対する健康保険の利用条件厳格化、議会選挙に比例代表制を導入する法案を2025年春までに提出することを約束した。

極右は、社会保障関連法案の最終審議が始まる12月2日までに公的年金の物価スライド制導入などのさらなる譲歩を求めていた。

バルニエ首相は医療費負担の引き上げ方針を撤回する新たな譲歩案を提示したが、年金制度修正を受け入れなかったことから、極右は不信任案の提出に踏み切った。年金制度修正を受け入れなかったのは、財政再建の支障になるだけでなく、政権を支える中道勢力の猛反発が避けられないからだ。

極右政党の実質上のリーダーであるルペン氏は現在、欧州議会議員在職中の不正経費受給疑惑の係争中で、有罪となった場合、5年間の公職停止となり、2027年の大統領選挙への出馬ができなくなる。

ルペン氏は11月、5年間の政治活動禁止を含む求刑をされた(写真:Anadolu/Getty Images)

2025年3月末に予定される判決を前に、早期の政権打倒に方針を切り替えた可能性がある。

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