「医療の進歩」がもたらした"とんでもない代償" なぜコロナパンデミックが衝撃的だったのか
母なる自然から例を挙げてみよう。
2010年代半ば、カリフォルニア州は大規模な干ばつに見舞われた。2017年に入ると、今度はありえないほどの降水量に襲われた。タホ湖の一部では、数カ月のうちに20メートル以上もの雪が積もった(噓ではない)。6年も続いた干ばつは終わったと宣言された。
それはよかったと思うかもしれない。しかし、このことは予想外の逆効果をもたらした。
「最高の瞬間」にこそ、悪魔がやってくる
2017年の記録的豪雨により、その夏は植物が記録的成長を見せた。それはスーパーブルームと呼ばれ、砂漠の町までもが緑に覆われた。2018年には乾燥が続き、成長した植物はすべて枯れ、乾いた着火材となった。その結果、カリフォルニア州で過去最大級の山火事が発生した。
つまり、記録的豪雨が記録的山火事につながったのだ。
これは偶然ではない。樹木の年輪を見れば、豪雨の傷痕とそのあとの火事の傷痕とが刻まれているのが確認できる。この2つは密接に関連しているのだ。
「豊水の年は火事が減る一方で植物の成長が促されるが、そのあとに乾燥した年が続くと、成長した植物が乾き、それによって火事の燃料が増える」と、アメリカ海洋大気庁は書いている。
感覚的に理解しにくい話だが、やはりここでも平穏が狂気の種を蒔いたのだ。
平穏が狂気の種を蒔くという現象によって、人間は物事がうまくいかなくなる確率や、そうなった場合の結果を、低く見積もってしまう。何より安全だと思っているときこそ、物事は最も危険になりうるのだ。
ウィル・スミスは、アカデミー賞授賞式のステージでクリス・ロックを平手打ちしたあと、デンゼル・ワシントンに助言を求めた。ワシントンはこう言った。
「最高の瞬間こそ気をつけるんだ。悪魔がやってくるのは、そのときだ」
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