韓国で家族企業を阻む相続重税負担 不労所得上げると批判の的

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オソン石油工業の3代目、ペク代表は「家業を受け継いでいる経営者は、幼いときから事業環境に慣れているため、技術の習得が早く、市場の流れを読むこともできる。家業継承を通じて技術と経営ノウハウをおのずと学んでいる」と言う。

日本の代表的な家族企業、呉竹(奈良市)は墨と筆を造る会社だ。すでに創業100年を数え、現在の社長で5代目となる。伝統技術を応用し、今では先端的な製造企業に変身を遂げた。70年代に現代的な「筆ペン」を投入。最近では墨の製造技術を基に開発した「カーボン技術」を活用し、融雪剤や自動発光表示、道路塗装剤の製造も手掛けている。

世界には、長寿の家族企業を育成するために注力している国が少なくない。日本は08年、「中小企業経営承継円滑化法」を制定した。ほかの先進国でも関連法案を検討中だ。

一方、韓国では家業を継承させれば「富を遺す」という批判を受ける。家族企業は「不労所得を上げる場所」という冷ややかな見方も多い。相続税も家業継承を望む企業家にとってネックだ。韓国の相続税の最高税率は50%で、英国(40%)、米国(35%)、台湾(10%)より高い。

行きすぎた相続税負担で、企業が経営権を放棄することもある。世界トップのツメ切りメーカー、スリーセブンのオーナーが08年、中外新薬に交替したことがあった。これは、スリーセブンの創業者キム・ヒョンジュ会長が他界したことで発生した相続税150億ウォンを遺族が納税できず、株式を中外新薬に売却したためだ。遺族らは、その後紆余曲折の末に経営権を取り戻したが、韓国で長寿の家族企業を育てるためには、解決すべき課題も多い。

(韓国『中央日報エコノミスト』2011年12月5日号/イ・ユンチャン記者 =週刊東洋経済2012年1月14日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

 

写真はイメージです。本文とは関係ありません 撮影:尾形文繁

 

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