シンガポール総選挙、与党が圧勝した理由 89議席のうち人民行動党が83議席を獲得
9月11日に行われたシンガポールの総選挙では、与党・人民行動党(PAP)が圧勝と言える結果を残した。3月に死去した国父であるリー・クアンユー元首相後のシンガポールの政治も、ほぼ1党独裁の体制が続いていくことになる。
11日の総選挙は、議席数89議席のうちPAPが83議席を獲得、最大野党である労働者党(WP)が6議席を獲得した。前回2011年の総選挙から定数が2議席増となっており、前回はPAPが81議席、WPは6議席を獲得していた。なお、2012年に実施された補欠選挙で、WPがさらに1議席を追加している。
PAPが得票率を10%引き上げた
議席数は前回とそれほど変わらないが、大きな変化はPAPが今回獲得した69.9%という得票率だ。前回2011年の総選挙では60.1%と史上最低の得票率に終わり、PAPは惨敗。経済政策や長期政権への批判票が集まっていた。
「今回はほぼ完勝と言ってよい」。拓殖大学国際学部教授で、シンガポールの政治・経済に詳しい岩崎育夫氏はこう指摘する。69.9%の得票率は、2001年の総選挙で75.3%を獲得して以降は凋落傾向にあったPAPへの信認を取り戻したことも意味する。リー・シェンロン首相も選挙後の記者会見で「PAPにとって良い結果を得たが、シンガポール国民にとってもすばらしい結果だ」と自信を見せた。
今回の選挙戦について、「故リー・クアンユー氏の弔い合戦」「シンガポール建国50周年」という2つの要素もあり、PAPに追い風が吹いたのではないかとの見方もある。だが、正確にいえば、「シンガポール国民の現実的な判断の結果」(岩崎教授)かもしれない。
「もうリー・クアンユー時代は終わり、これからは政府と国民がきちんと相対しながら、今後の国づくりをどうすべきかを考えなければならない。そう考えた場合、現在のシンガポールの運営を安心して任せられるのはPAPしかいない、と国民が判断した」(岩崎教授)。政界から引退していたゴー・チョクトン元首相が再び立候補したことも、PAPのこれまでの実績をアピールすることに繋がったといえるだろう。
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