北海道から九州まで「ローカル私鉄気動車」の記憶 戦前生まれや「バスそっくり」など個性派ぞろい

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北海道ならではの貴重な存在としては「簡易軌道」があった。村営なので私鉄とはいえないが、別海村営軌道風蓮線の跡が奥行臼停留所に明確に残っている。気動車(自走客車といわれた)や貨車なども保存され、北海道の開拓時代の面影を色濃く残している貴重な存在である。

別海村営 自走客車
別海村営軌道の気動車(撮影:南正時)

東北地方の主な非電化私鉄では、津軽鉄道、南部縦貫鉄道、下北交通、弘南鉄道黒石線(いずれも青森県)、岩手開発鉄道(岩手県)、同和鉱業小坂鉄道(後の小坂製錬小坂線、秋田県)などが筆者のお気に入りだった。残念ながら津軽鉄道を除き廃止(岩手開発鉄道は貨物専業化)されてしまったが、中でも津軽鉄道、南部縦貫鉄道、岩手開発鉄道にはよく通った。その目的はいずれも個性的な気動車である。

津軽鉄道
岩木山をバックに走る津軽鉄道の気動車(撮影:南正時)

まさにバスのようだった「レールバス」

とくに人気があったのは南部縦貫鉄道のレールバスだ。文字通りバスの車体が線路を走るようで、メカニズムもバスのごとき機械式変速機を用いているためクラッチとシフトレバーがあり、筆者は運転士がギアチェンジをする光景が今も目に焼き付いている。同線は1997年に休止、2002年に廃止となったが、現在も2両とも動態保存されているのはうれしい限りだ。

南部縦貫鉄道 レールバス
昔のバスそっくりの丸っこい車体が特徴の南部縦貫鉄道のレールバス(撮影:南正時)
南部縦貫鉄道 野辺地駅
雪の野辺地駅にたたずむ南部縦貫鉄道のレールバス(撮影:南正時)

岩手開発鉄道は現在も貨物鉄道として現役だが、1992年までは旅客用の気動車も運行していた。流線形のクラシックなスタイルのキハ301は前述した夕張鉄道のキハ200形で、国鉄のキハ07形気動車とほぼ同一設計であった。自社発注のキハ202は切妻構造の簡素なデザインで「食パン」の愛称でも呼ばれた。惜しくも両車とも解体されてしまい現存しない。

岩手開発鉄道 キハ301
岩手開発鉄道のキハ301。元は北海道の夕張鉄道の車両だった(撮影:南正時)
岩手開発鉄道 キハ202
キハ301とは対照的に平面的な前面が特徴のキハ202。「食パン」と呼ばれた(撮影:南正時)
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