忙しい職場ほど「考えない人」が増える驚きの理由 本人と組織の「ラクしたい」が生んだ悲惨な結果
「何が問題なのでしょうか?」
「この問題はどのような構造、あるいはメカニズムで起こっていますか?」
「業務改善とは、具体的に何を改善することでしょうか?」
思考力研修において、このような問いが投げかけられます。しかし、多くのビジネスパーソンは反応できないのです。
おそらく同じことが、普段の仕事においても起こっているのでしょう。
「スキルの問題」は本当か
一般的に思考力の欠如は個人のスキルの問題と認識されがちです。しかし本当にそうなのでしょうか。
企業の研修などでお会いするビジネスパーソンのディスカッションや何気ない雑談を聞いていると、「忙しい」「余裕がない」「効率化したい(してほしい)」「人が足りていない」という声ばかり聞こえてきます。
また、研修の休憩時間になると参加者たちは一斉にパソコンを開き、通常の業務を始めたり、慌ただしくメールチェックをしたりしています。その表情は少しも輝いておらず、疲弊しているさまが外部講師の私にも伝わってきます。
もちろん個々の工夫で自分の仕事を最適化できるのが理想ですが、一方で彼らはそれができない環境の中にいるとも考えられます。やることが多すぎて、何かをじっくり考える時間などとても確保できない状態で仕事をしているのではないでしょうか。
そしてそのやることの中身を明らかにしていくと、大抵が「作業」なのです。
私は「作業」と「思考」は共存することができない、相反する概念だと思っています。一般的に、「思考」とはとてもパワーの要る行いです。時間的かつ精神的に余裕がなければできません。
ですから、思考を促すのであれば、まずは作業の時間を取り除かないといけません。逆に言えば、日々時間に追われ、忙殺されている「作業者」に思考力を求めることはある意味では矛盾しているのです。
多くの企業は従業員の思考力強化を目的に研修やセミナーを企画します。それ自体は素晴らしいことです。しかし忙殺された作業者ばかりの組織にそのような研修を提供しても、残念ながら何かが変わることはありません。
“自分で考える”ことができる社員(部下)を増やしたいのであれば、まずは作業の時間を取り除かないといけません。
次に、別の視点から考えてみましょう。「作業者」となってしまっているビジネスパーソンの視点です。
「忙しい」「余裕がない」「効率化したい(してほしい)」「人が足りていない」という彼らの声は、悲痛な叫びのように聞こえます。しかし、このような言葉は冷静に評価しないといけません。
彼らは、本当に心の底から、効率化したいと思っているのでしょうか。
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