橋下さん(徹・大阪市長)は何もできない それでも投票する有権者--内田樹・思想家
橋下さんに投票した有権者は、橋下さんが生活のレベルを上げたり、大阪の問題をすべて解決してくれるとは思っていない。たぶん何もできないんじゃないかと思いながらもすがってしまう。そこまで追い詰められ、思考停止に陥っている。
「待ったなし」「閉塞感」という言葉がよく使われるが、政策の適否を考える思考ではなく、気分の話。政治状況がとてつもなく難しくなって、世界中の為政者も答えを出せない。その問題に日本の有権者が答えを出せるわけがない。
大阪のように疲弊している都市で、役所や教育に上意下達的な再編を持ち込み、ついてくる人には報酬、反対する者に罰、のような組織規律を導入した場合、全体としてのパフォーマンスは絶対下がる。市役所の職員を減らして機能が上がるなんて、どうしてそんな論理に皆がうなずくのかわからない。
行政機構の非効率とか二重行政についても、同じ機能を持つ施設や機構が複数あることで、災害とか事故のときにシステムクラッシュを避けるリスクヘッジができる。「大阪の危機」を唱える人たちが、リスクマネジメントを考えないのは不思議だ。
郵政民営化選挙と同じ
大阪ダブル選挙は、2005年の郵政選挙を思い起こす。郵政民営化とは何なのか、よくわからずに「既得権益にしがみつくやつらから剥ぎ取れ」ってことで剥ぎ取ったけど、誰にも何の分け前もこなかった。それが今度は大阪都構想。争点になったけど、やはりよくわからなかった。
(撮影:引地 信彦 =週刊東洋経済2012年1月14日号)
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