得をするのは誰か?北陸新幹線の新案浮上 膨大な建設費、利害絡み合う未定ルート

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京都市を通ることで旅客需要を望めると同時に、小浜市を経由するので福井県にも魅力的に違いない。何より、JR東海に乗り入れないため営業距離が延びるJR西日本には、運賃収入を増やせるという大きなメリットがある。「リニアのルートは京都ではなく奈良を経由するため、地盤沈下を恐れる京都市にとって、(京都を経由しない)若狭ルートよりも望ましいプラン」(JR関係者)という声もある。

だが最大のネックとなりそうなのが建設費だ。最長だった若狭ルートより長くなるうえ、地下トンネルも掘らねばならず、巨額の費用がかかると想定される。もともと若狭ルートを要望していた京都府亀岡市などルートからはずれる自治体も黙ってはいないだろう。

ルートの議論が活発化するにつれて、京都府舞鶴市など、これまでルートに入っていなかった自治体からも、新幹線待望論が出始めている。これ以上ルートが複雑になれば、コストはさらにかさむ。

北陸新幹線には東京─大阪間の二重系統化という目的もある。しかし、リニアで東京と大阪を結ぶ運行計画もあり、そもそもそこまでの投資が必要なのか疑問も残る。

建設費かさんでも、企業の懐痛まず

整備新幹線は国民のインフラという位置づけゆえに、建設費用は国と地元自治体が負担する。JR西日本は完成後に使用料を払う仕組みで、費用が膨らんでも直接懐が痛むことはない。

本来重視すべきは、ムダな税金を使わない合理的な計画と、消費者の利便性のはず。このままだと、新幹線誘致で票を得た政治家とゼネコン、鉄道会社だけが得をするという事態になりかねない。

「週刊東洋経済」2015年9月19日号<14日発売>「核心リポート05」に一部加筆)

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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