中国政府は景気浮揚に向けた追加財政政策の一環として、地方政府が抱える「隠れ債務」対策に今後5年間で10兆元(約215兆円)を投じる。全国人民代表大会(日本の国会に相当)の常務委員会が11月8日、関連法案を承認した。
具体的には、地方債の一種である「専項債」(訳注:地方政府が収益性のある公共インフラなどの建設を目的に発行する債券)の発行限度を6兆元(約129兆円)引き上げ、3年間に分けて2兆元(約43兆円)ずつを隠れ債務の借り換えに充てる。
さらに、今後5年間にわたり毎年8000億元(約17兆円)の新たな特別債券の発行を認め、同じく隠れ債務の借り換えに回す。これらの措置により、地方政府の財政を圧迫している利払い負担を軽減するのが狙いだ。
(訳注:中国の地方政府は傘下に「融資平台」と呼ばれる投資会社を持つ。「隠れ債務」とは融資平台が抱える高金利の債務を指し、地方政府の暗黙の保証が与えられているが公式統計には表れない)
「政策思考の根本的転換」
「今回の措置は、隠れ債務の問題解決に向けた政策思考の根本的な転換を意味する。これまでの応急処置的な(受け身の)対応から、より能動的な関与へ。散発的な個別リスクへの対処から、全体的なリスク低減へとアプローチを切り替える」
中国財政省(日本の財務省に相当)の藍仏安大臣は、11月8日の記者会見でそう述べ、さらにこう続けた。
「地方政府の通常債務と隠れ債務の併存を解消し、すべての債務を透明化する。また、リスク低減ばかりに重きを置かず、同時に経済発展の促進を重視する」
藍大臣は、今回の措置により既存の隠れ債務を大幅に減らす一方、新たな隠れ債務の発生を決して許容しないと強調。財政省が関連部門と協力して厳しく監督し、違反行為に対しては情状酌量を一切認めない方針で臨むとした。
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