「虫混入報告」チロルチョコとシャトレーゼの明暗 企業ブランドを守るために企業ができること

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初動に失敗したシャトレーゼですが、事後の対応はむしろ良い事例と言えます。自らの落ち度をきちんと認め、消費者に謝罪。事故の再発防止とともに迅速に対応できるよう連絡体制なども見直したそうです。

また、今回のような問題が発生した際、取材を拒否する企業も多い中、同社は真摯かつ丁寧に取材を受けようと努めていました。将来、同様の問題が発生しても、同社は今回の反省をいかせると思えます。

異物混入の苦情、都内だけで500件超

東京都によると、2022年度の都内の異物混入による苦情件数は565件にのぼりました。担当者は「企業には再発防止策などを指導しているが、ゼロにするのは難しい」(食品監視課)といいます。

メーカーが規定に基づいて衛生管理を徹底するのは当然ですが、どんなに対策を講じても100%異物が混入しないとの保証はありません。SNSが普及した現在では、意図的に異物を入れて「虫が入っていた」などと言う悪質な投稿をする人が出てくることも考えられます。

仮に悪質な投稿だったとしても(犯人に法的措置が取られるのは当然ですが)、企業側には悪影響があります。初動対応が遅れたり、隠蔽したりすれば、企業ブランドに傷がつくリスクは否めません。企業側はむしろ、「こうした問題は必ず起こる」という前提のもとに、その時、どう対応するかを過去の事例を参考に、細かくシミュレーションしておくことが大切です。対応は迅速な公表だけでなく、原因調査、保健所への届け出、再発防止策の策定など多岐にわたり、その時になって慌てていては後手にまわるからです。

もちろん現実のトラブルには様々なケースがあり、シミュレーションをしていても完全な対応ができるとは限りません。ケースごとに柔軟な対応を必要とされることもあるでしょう。完璧な対応をしても、悪影響がまったくないわけではありません。

しかし、トラブルを想定したシミュレーションや準備をしないより、しておいたほうが初動で間違いを犯すリスクや悪影響の度合いは著しく低くなります。企業がその準備をする時、今回の2つの企業の初動や事後の対応が重要な参考資料になることは間違いありません。

日高 広太郎 広報コンサルタント、ジャーナリスト

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ひだか こうたろう / Kotaro Hidaka

1996年慶大卒、日本経済新聞社に入社。東京本社の社会部に配属される。その後、小売店など企業担当、ニューヨーク留学(米経済調査機関のコンファレンス・ボードの研究員)を経て東京本社の経済部に配属。日銀の量的緩和解除に向けた政策変更や企業のM&A関連など多くの特ダネをスクープした。シンガポール駐在を経て東京本社でデスク。2018年に東証一部上場のBtoB企業に入社し、広報部長。2019年より執行役員。2022年に広報コンサルティング会社を設立し、代表に就任。クライアント企業のメディア掲載数を急増させている。

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