すでに田中真紀子元外相は、不倫報道についてある情報番組で「やっぱりマスコミと、政界の反玉木か知らないですけど、反国民(民主)か、そういう癒着がえらく分かりやすく出てきて」などとコメントしているが、同様の思考はX上に溢れ返っている。
「玉木潰し」「国民民主党潰し」「露骨な財務省の陰謀」と書かれた投稿に数十万ないし数百万単位のインプレッションが表示されている。
「出る杭は打たれる」――同党に降りかかるスキャンダルは、旧態依然とした体制に固執し続ける守旧派の悪だくみの疑いが濃厚であり、そうでなくても彼らはそれを最大限利用して信頼を失墜させようとする――という善と悪の闘争の物語に火をつけるのだ。
国際政治学者のP・W・シンガーとアメリカ外交問題評議会客員研究員のエマーソン・T・ブルッキングは、SNSの「注目争奪戦」において、物語が定着するかどうかを決定するのは「シンプルさ」「共鳴」「目新しさ」の3つだと述べた(『「いいね!」戦争 兵器化するソーシャルメディア』小林由香利訳、NHK出版)。
「政治家、ポップスター、ヘイト集団、反ヘイト集団の誰であれ、『物語』を自分のものとし、観察者の感情を呼び込み、信憑性を与え、その結果コミュニティを構築できた者が新たな勝利者となる」と。
しかし、これは自分から注目に値する事件を積極的に作り出していくような自作自演の側面が強い。今回の騒動は、予期せぬスキャンダルによって結果的に「物語の新たな一章」が紡がれたところに大きな違いがある。
ネット上では、スピーディな謝罪会見の開催と謝罪の潔さを評価する声が意外にも多く、SNSでは動画とともにシェアされるなどしている。
また、前述したように善と悪の闘争の物語として人々の興味を呼び起こす起爆剤となりつつある。これもシンガー=ブルッキング的な「物語」に人々を巻き込んでいく感情の動員となり得る。
そして、それはポピュリズムと非常に相性がいい。選挙後、国民民主党の公認キャラクター「こくみんうさぎ」のぬいぐるみの売り切れが続出したように、アテンション・エコノミー(注目経済)は、出来事そのものの評価などお構いなしに予想外のムーブメントを引き起こすのである。
とは言え、消去法的な支持者も少なくない
もちろん、それでも国民民主党に期待が集まるのは、現実的な消去法でしかない面もある。
「失われた30年」どころか「失われた40年」に向かって、日本を地の底に引きずり込むかもしれない自公連立政権もトラウマだが、かつて公約にない消費増税を強行した野田佳彦代表率いる立憲民主党もトラウマである。
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