玉木氏の不倫騒動が「国民民主の躍進」に繋がる訳 「不倫しない無能より不倫する有能」ムードの背景

✎ 1〜 ✎ 35 ✎ 36 ✎ 37 ✎ 38
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

スキャンダルで失速せずに政策推進に努めてほしいという投稿も少なくなく、特にX(旧Twitter)上では、後述するが「玉木潰し」がトレンド入りし、応援するユーザーが目立っている。

前回の記事(玉木氏「不倫報道」も無傷? 国民民主が大躍進の訳)で筆者は、国民民主党を「ハイブリッド型のポピュリズム」であると分析したが、このような視点で見ると、今回の不倫騒動はかえってポピュリズムという運動の火に油を注ぐ結果になる可能性が高いと思われる。

まずポピュリズムには2つの定義がある。「固定的な支持基盤を超え、幅広く国民に直接訴える」タイプと、「『人民』の立場から既成政治やエリートを批判する政治運動」タイプだ(水島治郎『ポピュリズムとは何か 民主主義の敵か、改革の希望か』中公新書)。

前者の例は、最近だと2017年の希望の党や枝野フィーバーによる立憲民主党など、後者の例は、れいわ新選組、参政党、日本保守党などの台頭が該当するが、とりわけ後者のポピュリズムは抵抗勢力との闘争が燃料になりやすい。

後者のポピュリズムは、前掲書によれば、自らが「人民」を直接代表すると主張して正統化し、広く支持の獲得を試みる、「人民」重視の裏返しとしてのエリート批判、「カリスマ的リーダー」の存在、イデオロギーにおける「薄さ」に特徴がある。

その点を踏まえて、筆者は、「103万円の壁」の見直しを事実上のシングルイシュー(単一論点)政策として掲げ、「固定的な支持基盤を超え、幅広く国民に直接訴え」つつ、「人民」重視の裏返しとしての(政策に反対する、あるいは疑問視する)メディアや政党などに対する批判を展開していく絶妙なスタンスと評した。

つまり、ポピュリズムの2つのタイプをうまく組み合わせた「ハイブリッド型のポピュリズム」を実践していると考えたのである。なぜなら、後者のポピュリズムにおける「エリート批判」と「カリスマ的リーダー」という要素が弱いことにより、急進化する傾向が比較的抑制されると推測されるからだ。

実際、国民民主党は「政策優先」で、政権交代のような「政党優先」の立場を取らないことを表明しており、玉木氏の「政権の延命に協力しない」発言は好意的に受け止められた。そういう意味で「ソフトなポピュリズム」と言い換えることができる。

不倫騒動がポピュリズムを加速させる

だが、今回の騒動は、後者のポピュリズムに付きものの「敵対勢力」「既得権益」からの攻撃や裏工作のようなものと認識され、むしろ玉木代表や国民民主党の支持層の結束を強めることになるかもしれない。

当たり前だが、明確な証拠がない限りは陰謀論の域を出ない。けれども、直近の国政選挙で急伸した党の代表、しかも国民生活に直結する減税などの実現を左右する重要な人物が、首相指名選挙直前のタイミングで「不倫報道がなされた」という事実だけで十分なのだ。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事