11月6日の政務調査会の議員懇談会で、玉木雄一郎代表は「誰とやるか、どこと組むかではなく、何を成し遂げるかが大切」「われわれは政権の延命に協力する気はありません。ただただ国民に訴えた政策を1つでも2つでも実現していく」と述べており、同様の発言はインターネット番組などでも行っている。
このような自分たちの党利よりも国民目線の政策実現を目指すスタイルは、後者のポピュリズムにありがちな「既得権益という名の敵」を作り出して排撃する傾向を抑制し、交渉と駆け引きという政治のリアリズムへと引き戻す性質を持っている。
11月8日の外国特派員協会における記者会見で、玉木代表が主張した「対決より解決」という言葉には、党勢を拡大したり、自分たちの名を売ったり、政権を奪取することが目的ではなく、国民の生活を改善する減税や家計支援を着々と進めていくことが目的であることがよく表れている。
対立色の中和が、日本人にもマッチ?
分断を煽るポピュリズムではなく、国民のニーズに即した公平な仕組みに変えるための協調を呼びかけるポピュリズムである。
政策の障害になっている政治勢力の排除や、善と悪の戦いといった舞台を求める「強いタレント性」がないことが、むしろ対立色を中和している面があるだろう。
このようなハイブリッド型のゆるいポピュリズムは、好戦的な言動や極端な改革を嫌う日本のマジョリティとかなり相性が良いだろう。
政治学者のシャンタル・ムフは、行き過ぎた不平等の是正や差別の解消などの公平性の実現などを目指すポピュリズムについて、排外主義や人種主義、反グローバリズムなどに走りがちなものと区別して、現在の民意にそぐわない政治体制を軌道修正する「民主主義の回復」を志向するものとして歓迎している。
ムフのいうポピュリズムは、社会において「自由と平等の原理」が徹底されていないことを問題視するもので、「立憲主義的な自由-民主主義的枠組みの内部で、新しいヘゲモニー秩序を打ち立てることを求める」ものだからだ(『左派ポピュリズムのために』山本圭・塩田潤訳、明石書店』)。
一部の経済人や政治家たちが唱道する経済政策によって社会が破壊され、多くの国民が疲弊し、それでも何も変わらない危機的な状況、民意=主権者の声が政治に反映されているとは言い難い現状に対して、もう一度「人民による支配」という民主制の根本に「原点回帰」しようと試みる運動といえる。このようなポピュリズムは「民衆こそが正義でエリートは敵」とする「反エリート主義」とは似て非なるものである。
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