故障で全面運休も、欧州「水素列車」の前途多難 期待高いが時期尚早?メーカーもトーンダウン

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iLintはもともと納期も延びており、全編成が出揃うまで予定より1年以上遅れた。それでいて、いざ走り出してみたら故障が相次いでまともに走らず、路線の運休にまで追い込まれたのでは、鉄道会社側もたまったものではない。

Alstom coradia iLINT
トラブルの連続で長期運休が続くアルストムの「iLint」=2016年(撮影:橋爪智之)

RMVは、アルストムとの間で結んだ25年間の運行およびメンテナンス契約を早期に終了させる可能性があることを示唆している。

また、アルストムに対し、代替となるディーゼルカーの提供や、故障の修繕費用などの負担を求めているが、アルストムはディーゼルエンジンを搭載する標準型Lintの生産を今年初頭に終了しており、新車による代替が難しい状況となっているのが少々気掛かりである

手堅い「ローエミッション」車両は普及

すでにお気付きの方もいらっしゃると思うが、ヨーロッパでは「これがいい」となると、その方向へ急激に舵を切る、しかも達成が困難なほど極端な目標を掲げる傾向が強く、そして途中で挫折し、失敗に終わることが多い。

近年では、自動車の完全EV化という話が最たるものだ。EUは2040年までに内燃機関禁止という草案を打ち出したものの、最近になって「PHEV(プラグインハイブリッド車)もEVとして認めてもいいのではないか」など急速にトーンダウンしており、メーカー側も「期限内に販売車両の全EV化は無理」と白旗を上げるところも出てきた。

極端な目標を掲げることで、達成へ向けて自分たちを追い込むという考えがあるのかもしれないが、かえって市場の停滞を招きかねない悪しき例となっており、残念ながら水素燃料も同じ流れとなっている印象を受ける。

2022年のイノトランスで、日立レールは電気・ディーゼル・バッテリーを組み合わせた、イタリアの近郊用トライブリッド車両「マサッチョ」を展示した。他国の主要メーカーが水素燃料車両を展示する中、マスコミからは「なぜ日立は水素燃料車両を作らなかったのか?」「この時代にまだディーゼルなのか?」といった、少々意地の悪い質問が飛び交っていたのを筆者は聞き逃さなかった。

日立 マサッチョ
イタリア各地へ配属され活躍する日立の「マサッチョ」(撮影:橋爪智之)
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