故障で全面運休も、欧州「水素列車」の前途多難 期待高いが時期尚早?メーカーもトーンダウン
2022年のイノトランスで展示されていた水素車両は、その後どうなったのであろうか。2年前に発表されたばかり、しかもまったく新しいものをゼロから作ったとなれば、そこから数年にわたる試運転が続くのは決して珍しいことではないが、少なくとも展示された車両の中で営業運転を開始したものはない。
話が進展したのは、シュタドラーが製造したアメリカ・カリフォルニア州向けの水素車両で、2027年には営業運行を開始する予定と明言されている。両数も当初は5両編成4本の発注だったのが、2023年10月には6本が追加発注され合計10本になるなど、かなり話が具体的に進んでいる様子がうかがえる。それでも、2027年ということは3年先だ。
ドイツでの営業運転で問題露呈
では、さらに前の2016年のイノトランスで展示され、ドイツ国内で2018年から試験運行を行い、2022年から本格的な営業を開始したアルストム製の水素燃料車両「iLint」はどうなったのであろうか。
iLintは、独ニーダーザクセン州北東部のEVBとヘッセン州のRMVという2つの鉄道で営業運行しているが、両社とも状況は芳しいものではない。
EVBの列車は動力源となる水素の不足により、現在はディーゼルカーが代走している。水素を製造する工場で発生した火災事故によって供給に問題が起きているためで、影響は鉄道のみならず水素燃料を使った自家用車のためのスタンドにも及んでいる。水素供給という、インフラ部分の脆弱さが露呈した形となった。
さらに深刻なのがRMVだ。2024年10月現在、iLintで運行していた路線「RB15」(フランクフルト中央駅―バット・ホンブルク―ブラントベルンドルフ間)は運休となり、バス代行が続いている。iLintは27本導入されたが、頻繁に故障が発生して列車の運休が相次いだうえ、メーカーの補修部品欠品で修理もできず、稼働できる車両がほとんどないという有様なのだ。
アルストムはこの対応に追われているが、現段階では人員を増やして対応部品の増産やサポート体制を強化するといった話に留まっており、解決には相当な時間を要しそうな状況だ。もともと運行していた車両をiLintで完全に置き換えてしまったことから、代走のための車両を手配することもできず、少なくとも今年12月まではバス代行が続くと考えられている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら