故障で全面運休も、欧州「水素列車」の前途多難 期待高いが時期尚早?メーカーもトーンダウン

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2年前、筆者が寄稿したイノトランス記事(2022年11月6日付記事『次世代の鉄道車両「主役」は水素かハイブリッドか』)で、水素燃料車両はインフラ整備や技術的部分において、現状はまだ多くの課題が残されており、バッテリーなどと組み合わせたバイモード、トライブリッド車両が最適解になるのではないか、と指摘した。

記事は2年後、4年後のイノトランスで、はたしてどのように勢力図が変わっているのだろうか、と締めくくった。

その答え合わせをしてみれば、マサッチョはイタリア全土へ配置され、燃料消費量と排気ガスが多い旧型ディーゼル機関車やディーゼルカーなどを徐々に置換え、大きな故障もなく順調に運行を続けている。一方で、現時点で水素燃料車両が大きなトラブルもなく安定的に運行されている鉄道会社は皆無に等しく、導入は時期尚早だったと言わざるをえないだろう。

Trenitalia D445
排ガス、燃料消費共に多いイタリアの旧型機関車(撮影:橋爪智之)

水素車両の今後はどうなる?

水素はインフラに関しても課題が残っている。水素供給と、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーはセットで考えなければならないが、これらは広大な土地を必要とする。アメリカや中国、ロシアといった国土の広大な国であればある程度安定的な供給が見込めそうだが、率直に言えばヨーロッパ大陸諸国や日本のような、使用できる土地が限られている国には不向きな発電方法だ。

太陽光パネルを敷き詰めるために森林を伐採して切り開いたり、逆に水素を生成するために化石燃料を燃やしたりしたら、それこそ本末転倒と言わざるをえない。

そう考えた時、国や地域によっては最初からゼロエミッションを目指すのではなく、まずは今ある技術や資源を最大限に生かし、ローエミッションから徐々に始める……という選択肢も視野に入れていく必要があるのではないだろうか。

イノトランス2024
2024年も多くの車両が展示されたイノトランス(撮影:橋爪智之)

水素燃料車両は、技術熟成と供給インフラの部分において、まだまだ多くの課題が残されていることが改めて明らかになった今回のイノトランス。2年後の2026年、さらにはその先で、また答え合わせをしてみたいところだ。

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橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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