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SVFはなぜ「AI巨額投資」を正当化できるのか?稀代のリスクテイカー、孫正義氏に規律をもたらすCFOが明かす意思決定の深層

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Navneet Govil/ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズ(SBIA)エグゼクティブ・マネージング・パートナー兼CFO(最高財務責任者)。コーネル大学にてエンジニアリング修士(MEng)および経営学修士(MBA)を取得。CAテクノロジーズやヒューレット・パッカードなどの多国籍企業で財務の要職を歴任。2016年、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)の立ち上げ前に参画。最初の財務担当社員としてゼロから財務部門を構築。現在は投資委員会のメンバーとしてソフトバンクグループ孫正義会長らと共に、最終的な投資判断にも携わる(写真:ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズ)
金利、地政学、技術革新――。企業経営を取り巻く前提条件が、過去30年で最も不安定な局面に入る中、過去のデータを積み上げる帰納的アプローチだけでは非連続な未来を説明できず、かといって根拠なきビジョンに依存すれば巨額の資本を失うリスクもある。
不確実性が常態化する中、ソフトバンクグループ(SBG)のビジョン・ファンド1号・2号およびラテンアメリカ・ファンドを含むソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)は設立以来、約1916億ドル(約30兆円)という民間VC(ベンチャーキャピタル)としては規格外の資本を動かし続けている。
SVGが目指すのは、「人工超知能(ASI)」の実現だ。2026年3月までにOpenAIへ340億ドル以上を投資し(300億ドルの追加コミットメント含む)、資本投下によって自ら市場を切り開いている。自動運転のパイオニアであるWayveやAIインフラのリーダーであるDatabricksといったAI新興勢力にも支援を行い、AIにフルベットしている。
市場や格付け機関からその積極的な投資姿勢に対して厳しい視線が注がれることもあるが、SVFはかつて経験した巨額赤字という試練を経て業績を持ち直してきた。それは、大胆な攻めの戦略を展開しながらも、ファンドの核心には生き残るための厳格な規律が組み込まれているからだ。
孫正義会長の巨大なビジョンに対し、破綻しないためのガードレールを引き、鉄壁の財務規律との両立を最前線で支えているのがソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズ(SVFの運営会社)CFOのナブニート・ゴビル(Navneet Govil)氏である。
孫正義氏の「演繹」と、ゴビル氏の「帰納」という両極端な思考が交差する意思決定の現場で何が起きているのか。日本のビジネスリーダーにとっても実践的な示唆に富むだろう、ゴビル氏のインタビューをお届けする。

事業会社の視点を持ち込むことに注力した

――まず日本の読者に向けて、自身のバックグラウンドと現在の役割について教えてください。ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)にはいつジョインし、現在どのような職責を担っているのでしょうか?

私がSVFの運営を担うグループ子会社、ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズ(SBIA)に参画したのは2016年初頭だ。当時はまだビジョン・ファンドが立ち上がる前で、SBIA自体が「スタートアップ」のような状態だった。実際、私は社内で最初の財務担当社員であり、文字通りゼロから財務部門を構築するところからスタートした。

現在は、SBIAのエグゼクティブ・マネージング・パートナー兼CFOを務めている。投資委員会のメンバーとして、SBG孫正義会長をはじめとする経営陣とともに、最終的な投資判断を下す役割も担っている。

従来のファンドCFOの多くは監査法人の出身だが、私はエンジニアリングのバックグラウンドを持ち、ハイテク企業や製薬企業などの事業会社で現場の事業支援(リソース配分やR&D管理など)を長年経験してきた。

そのため、入社後にまず注力したのは、単なる投資家向けレポートの作成ではなく、事業会社の視点を持ち込むことだった。具体的には、約500社を超えるポートフォリオ企業全体のデータを可視化し、投資チームにインサイトを提供するための独自データプラットフォーム「FinSight」を自社開発した。投資先のCFOに伴走し、彼らがIPOに向けて成長するための支援を行うことも、私の重要な職責の一つだ。

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