なぜ銀行は地方の企業にカネを貸さないのか 地方創生に必要なのは、地元金融機関の力
銀行からの融資を受けやすくするポイントは他にもある。
「たとえば早いうちから銀行を巻き込むこと。銀行融資が受けられなかったとしても、そこで諦めず、なぜ融資が受けられないかを確認する。それがプロジェクトの弱点でもあるからだ。そして、銀行の説明要求に応えていく。そうすればプロジェクトの弱点が潰され、融資が通りやすくなる」(ぐっちーさん)。
東京や大阪では絶対できないことをやれ!
それと共に、根本的な話として、プロジェクトそのものの目新しさ、事業継続性なども重要なポイントになる。
「オガールプラザで体育館を造る際、銀行の頭取に『体育館を造りたいので融資を受けたい』と話したところ、その場で断られた。しかし、バレーボール専用の体育館であることを説明したところ、多目的用途だったら融資しないが、バレーボール専用なら融資しようという話になった。つまりとがったものこそが地方に必要だということ。東京や大阪でできることを地方でやっても負ける。地方の潜在能力は土地が安いこと。それを活かして、大都市圏ではできないことを実現してこそ、地方でやる意味が出てくる」(岡崎氏)。
ディスカバーリンクせとうちがサイクリストを対象に造った複合施設、「ONOMICHI U2」にも、地元のこだわりが存分に盛り込まれている。
「ありがちなのは、施設内のレストランやカフェなどのテナントに、東京の有名店舗を誘致するケース。でも、これだと東京や大阪で楽しめば済むわけで、わざわざ尾道に来ていただく理由がない。大事なのは、地元産品を活用した食事を出すことで、新しい尾道ブランドを作ること。それがプロジェクトの継続性にもつながっていく」(石井氏)。
融資を実行する金融機関も、先頭集団はすでに意識が変わっている。
「大事なのは選別する金融ではなく、育てる金融によって地元経済の活性化につなげること。資金を提供するだけでなく、知恵も貸せる銀行になれるよう努力していきたい」(小池氏)。
一方、銀行を監督する立場にある日本銀行も、協力する姿勢を見せている。日本銀行金融機構局金融高度化センター企画役の北村佳之氏は、こう語る。
「地域金融機関に求められることは、地域で集めた資金を地域に還元し、地域経済を活性化させることではないか。地方は今、人口減少の危機に直面している。子育てに十分な所得を提供できる企業や産業を地方に興すことが少子化対策につながってくるのではないか」と地銀など地域金融機関への期待を寄せる。
一方で「残念なのは、危機意識の乏しい地域金融機関や地方自治体が多いことだ。少子化・高齢化に加え、高度成長期に整備した公共施設がこれから一斉に耐用年数を迎え、更新費用が自治体財政を直撃する。街づくりに不可欠なPFI/PPPなどの公民連携の手法は、自治体の支出抑制、地元企業の事業機会の拡大、地域金融機関の融資機会の拡大にもつながるが、なかなか拡がっていかない」と警鐘を鳴らす。
「少子化による人口減少は、ゆっくりと闇が深まっていく夏の宵、いわば『夕凪の時代』だ。切迫感がないため、公民連携のように、担当者にとって手間が掛かりリスクも伴う新たな取り組みは、地域金融機関、地方自治体とも後回しにしがちだ。確かに新しいことを何もやらなければ、新しいリスクを抱えることはない。だが10年後、20年後には『何もやってこなかったことによるリスク』がわれわれの前に立ちはだかるのではないか」。
大都市圏にはない、とがったビジネスプランを描き、地元の銀行と共にブラッシュアップを行う。持続的なビジネスになれば雇用が生まれ、経済が活性化し、人口流出にも歯止めが掛けられる。地方創生は起業家と金融の協働こそがカギになる。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら