なぜ銀行は地方の企業にカネを貸さないのか 地方創生に必要なのは、地元金融機関の力
では、実際に融資を実行する銀行はどう考えているのか。
一連のプロジェクトファイナンスのスキームでは、他行よりも一段ぬきん出ているといわれる広島銀行法人営業部の小池政弘部長は、プロジェクトの中身こそが重要だと考えている。
「融資に際しては、よく『人を見て貸せ』といわれる。あるいはバブルの頃は『土地を見て貸す』ような実態だった。だが、大事なのはプロジェクトに対しておカネを貸すこと。そのプロジェクトを通じてどうおカネが流れ、儲けを生み、納税の原資になるのか、という点までチェックする」。
プロジェクトの中身が悪ければ、いくら魅力的な経営者がいて、担保価値の高い不動産を持っていたとしても、そのビジネスは決して持続可能ではない。では、実際に融資を受ける企業側は、銀行から融資を受けるために、どういう点に注意しているのだろうか。
岩手県紫波町(しわちょう)で進められているJR紫波中央駅前都市整備事業の中心人物である、オガールプラザの岡崎正信社長は、起業家がもっと銀行員の言葉を理解する努力が必要だという。
「基本的には交渉なので、銀行員は銀行の論理で話をするし、事業者は事業の論理で話をする。その間に通訳を入れてはいけない。きちっと言葉が通じ合う関係性を築くのが、借りる側のマナー」と語る。
確かに、人様のお金を借りるわけだし、例えば事業環境が激変したら返済が滞るリスクもある。だから「銀行員は最初に必ずリスクの説明を求めてくる。どれくらい儲かるかではなく、事業者がリスクをしっかり理解してさえいれば、銀行は融資の決裁をしてくれる」。
また、「ディスカバーリンクせとうち」の取締役として、尾道の町興しに奔走している石井宏治氏は、「実は、事業計画書を作って銀行に融資をお願いしたものの、最初はなかなか決裁が下りなかった」。
だが、「自分たちがどういうリスクを取って事業を行うのか、またそのことが『最終的に町のためになる』という想いを説明した」。すると、「ここで融資を行わなければ、何のための地方銀行なのかということで融資を通してくれた」という。
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