定年世代が戸惑う「多様性の時代」の受け入れ方 「高度経済成長期」は迷うほど選択肢がなかった

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ところが、平成のバブル崩壊、失われた20年を経て、令和になって多様性の時代に放り込まれます。自分が思い描いてきた老後とは異なる時代が訪れて、「あなたは本当にそれでいいの?」と突きつけられているのです。

楽しみは「大谷選手のホームラン」だけ

70代のある男性は、「大谷選手のホームランくらいしか楽しみがない」とこぼします。とっくに子育ては終わったものの、我が子は晩婚化の流れの中で未だに結婚をしておらず、もちろん孫はなし。家族との会話もめっきり減って、本音を話せる相手もいないことに気づきます。あんなに嫌だった対面での接客商売が「案外、やりがいだったのかもしれない」と振り返ることもあるそうです。

『なぜ働く? 誰と働く? いつまで働く? 限られた人生で後悔ない仕事をするための20の心得』(アスコム)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

もちろん、それまで蓄えた資産をもとに悠々自適に暮らしている人たちや、定年を機に新たな楽しみを見つけた人もいますが、特に趣味などもなく、時間を持て余している人も多いといいます。

だからこそ今必要なのは、キャリアを人生そのものと捉えて、人生の解像度を少しでも高めることです。そのときの環境に応じて、小さな目標でもかまいません。それが自分にとって意味あるものだと思えることが、何より重要です。

そして、そこに向かうプロセスで得られる幸福感=「心理的成功」の感覚を、身に付けていきましょう。それが、他の誰かに与えてもらう幸福ではなく、自分で自分を幸せにしていくことにつながるのです。

先に紹介した長谷川さんも、自分が「終わった人」になるかもしれないと危機感を抱いたときには、特にやりたいことも、やるべきこともありませんでした。しかし、「定年本」を読み漁る中でキャリアコンサルタントという存在を知り、自分も資格を取ろうと決め、そこから勉強仲間と知り合い、私とも出会うことになりました。長谷川さんはこう振り返っています。

「戦略的に人脈を作ってきたわけではありません。でも、出会った人たちとの関わりの中で思いもよらない学びがあったり、新しいコミュニティに参加する機会があったり、自分も成長している気がします。まだ他人のキャリアにどれほど影響を与えられているかはわかりませんが、少しずつ支援できている実感はあります」

有山 徹 一般社団法人プロティアン・キャリア協会代表理事

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ありやま とおる / Toru Ariyama

4designs株式会社founder、代表取締役CEO。1977年、東京都日野市出身。早稲田大学卒業。大手食品メーカー、経営コンサルティングを経て、2019年、数度のキャリアチェンジをした自らの経験を生かし、キャリア支援サービスを行う4designs株式会社を設立。同年、法政大学の田中研之輔教授とともにプロティアン・キャリア協会を設立、代表理事に就任する。
個人向け「プロティアン・キャリア戦略塾」、法人向け「プロティアン化組織変革サービス」を提供し、大手企業へのサービス導入実績も多数。

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