定年世代が戸惑う「多様性の時代」の受け入れ方 「高度経済成長期」は迷うほど選択肢がなかった

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これは心理学的にも正しいようで、1995年に、コロンビア大学のシーナ・アイエンガー教授が、こんな実験をしています。24種類のジャムが並ぶ試食コーナーと、6種類だけの試食コーナーで、どちらが多く商品が売れるかを比較したそうです。

24種類のほうがたくさん売れそうですよね? 確かに24種類の試食コーナーには多くの人が集まりました。ところが、ジャムの購入率に着目すると、様子が違ってきます。6種類しか置いていないコーナーのほうが、10倍も多く売れたのです。

選択肢が少なく迷わなかった「高度経済成長期」

これは「ジャムの法則」として知られています。選べるものが多くなりすぎると、「あっちのほうがよかったかも」と後悔する心理が働いて、選択すること自体をためらってしまうというのです。選択肢が増えているのに逆に選びづらくなってしまっているので、「選択のパラドックス」とも呼ばれています。

どうでしょう? 自分に置き換えてみて、思い当たるような経験はありませんか? 今、私たちが生きている社会が、まさにこの「選択のパラドックス」状態です。

生き方は24種類どころではありません。SNSをのぞいてみれば、無数の他人の人生が目に入ります。働き方1つとってみても多くの選択肢があります。

転職は当たり前。副業を認める会社もあり、いくつも仕事を掛け持ちするダブルワーク、トリプルワークの人たちも出てきました。会社員という身分を持たずに、フリーランスで働く人たちも増えています。起業を選択する人も少なくありません。

投資で稼いで、30代でFIREした人がいるらしい! YouTuberして、好きなように生きている人がいる! 田舎暮らしは最高だと言っている人がいた!

なんだかうらやましいように思いますよね。でも、他人がやっていることに目がいくほど、自分の現在地を見失いがちです。

さまざまなモデルケースを参考にできるのは、情報社会のいいところですが、目移りばかりしてしまう反作用があることも否めません。あれもいいな、これもいいなと、他人の人生のいいところばかり目について、肝心の自分の人生に迷いが生じてしまうのです。

それに対して、"昭和のサラリーマン"が働き方に悩んだ、という話はあまり聞かない気がします。

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