NECの映像を"読む"AIは世界を変えるか 事故査定から空港運営まで、映像データを自動で分析・レポート化する世界初の技術

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システムは映像から「信号機のある交差点において、両方向から進入した車両が衝突した」という事故状況を認識し、さらに過失割合の判定まで行っている。この事例では、直進車両の過失が20%、右折車両の過失が80%と判定された。システムはこの判定理由も説明しており、「信号機のある交差点では通常、直進車が優先されるため」と記している。

システムは状況によって過失割合が変動する可能性があることも指摘し、例えば「直進車がスピード超過や一時不停止等の違反行為をしていた場合、過失割合が加算される可能性がある」という。AIが単純な規則の判断だけでなく、状況に応じたアドバイスも柔軟に行えるというのだ。

リアルタイムの状況把握と異常検知

このような詳細な分析と説明は、保険会社の査定担当者や法執行機関にとって非常に有用なツールとなり得る。人間の専門家が行う分析をサポートし、判断の一貫性や効率性を高めることが期待される。

もう1つの注目すべき応用例が、空港のグランドハンドリングの最適化だ。2024年10月7日14時48分39秒、ある空港の駐機場エリア701で撮影された映像をシステムが分析している様子を見てみよう。画面には空港の駐機場エリアの写真が表示され、航空機や作業車両が色付きの枠で囲まれており、システムがこれらの要素を個別に認識していることがわかる。

資料
航空会社の地上業務(グランドハンドリング)向けサービスでは、AIを使った作業状況の分析から、報告書の作成まで自動で行われる(筆者撮影)

システムは映像から航空機の整備状況、搭乗橋の接続状態、手荷物の積み込み作業の進捗、地上車両の動き、給油作業の進行状況などを認識し、テキストで報告している。例えば「エリア0では、航空機の整備作業が示されています。搭乗橋は航空機に接続されており、現在搭乗や降機が行われていることを示しています」といった具合に、各エリアの状況を詳細に記述する。さらに、システムは通常の作業フローから外れた事象があれば、それを自動的に検出して報告する機能も備えている。AI認識の誤りへの対策も講じられている。人間によるチェックと修正機能を実装し、ユーザーインターフェースの改善により誤認識の簡単な修正を可能にしているという。

このリアルタイムの状況把握と異常検知により、空港運営の効率化や安全性の向上に大きく貢献することが期待される。NECの担当者は「このシステムにより、空港運用の可視化と最適化が同時に実現します。人手不足が課題となっている航空業界において、効率的な運用を支援する重要なツールになると考えています」と語る。

このシステムの応用範囲は上記の例にとどまらない。ドライバーの安全運転評価、スポーツイベントのリアルタイム要約、さらには医療分野でのCT・MRI画像の分析と報告書作成への応用可能性も示唆されている。

ボクシングの試合をリアルタイムで解説する実証実験
ボクシングの試合をリアルタイムで解説する実証実験も行っている(筆者撮影)

映像データの活用が進む現代社会において、このシステムは膨大な映像情報を効率的に処理し、有用な知見を抽出する強力なツールとなり得るだろう。NECはこのシステムの実用化に向けて、約7社の企業と実証実験を進めている。「2024年度中または2025年度の製品化を目指しています」と担当者は意気込む。

資料
さまざまな業界での応用を見込む(筆者撮影)
石井 徹 モバイル・ITライター

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いしい とおる / Toru Ishii

1990年生まれ。神奈川県出身。専修大学法学部卒業。携帯電話専門媒体で記者としてのキャリアをスタート。フリーランス転身後、スマートフォン、AI、自動運転など最新テクノロジーの動向を幅広く取材している。Xアカウント:@ishiit_aroka

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