競合ひしめく「XRデバイス」に挑戦するパナの勝算 アップル、Metaが"目指さない"産業特化型で参入
加えて、パナソニックグループは事業者向けに多くの営業チャネルがあり、自動車メーカーやハウスメーカーなど産業VRへとつながる製品ポートフォリオがある。当然ながら各メーカーの部門と深いつながりがあり、直接の提案を行える。
「設計と製造におけるデジタルツイン活用、特殊訓練の3分野はVRの効果が明確で代替手段が乏しいこともあり、短期では(汎用デバイスの性能や使い勝手が十分に上がるまでは)狙っていけると考えている」(小塚氏)
一方で産業向けだけでは量産数にも限界がある。そこで共同商品開発を行ったのがShiftallだった。
元々パナソニック資本だったShiftallは、コンシューマー向けメタバースのアクセストラフィックを、ほぼ独占している“VRChat”向け製品に特化した事業を行っている。
個人向け普及を狙った万能型の一体型ヘッドセットならば、アップルやMetaに勝ち目はない。しかし、長時間装着し続けるため軽量コンパクトであることが重視される分野に特化した専用デバイスに近い製品にすれば勝負できる。
アップルやMetaが狙う“将来の何でもできる汎用デバイス”ではなく、特定用途に特化させることでApple Vision Proを超える画質と185gの軽量化を実現し、狭い領域ではあるが“ナンバーワン”の製品に磨き上げることで想定する領域では局所的には勝ち切れる。
パナソニックは産業領域、コンシューマーではShiftallが、それぞれの領域で存在感を出せば次の世代へと繋いでいけるという考えだ。
“普及への道のりは険しい”からこそ
実際に装着してみると、その快適性はほかのライバルとは比べものにならないほど優れている。本体が軽量でコンパクトであるため、まるで手術用のマイクロスコープのように額に巻いたヘッドバンドにぶら下げ周囲を確認しながら利用できる。
Apple Vision ProやMeta Quest 3には、周囲の状況をカメラで捉え、空間をVRディスプレイ内で再現するMR機能があるが、複雑で重いシステムになる。本機ではもっとシンプルな解決策を採用し、ワンタッチでフリップアップさせることで周囲の確認とVR視野の切り替えを可能にしている。
将来的な発展性としてMRのほうが進化の余地があるものの、“現在の技術的な制約”の中では現実的な選択肢だ。
競合製品としては、Bigscreen Beyondという127gの製品(解像度は5.2K)が挙げられるが、より軽量なこの製品よりも本機は圧迫感を感じない。なぜなら額に固定するため、長時間での圧迫が少ないためだ。
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