QBB「チーズの種類多すぎ」を生む組織作りの秘訣 「開発先導型」と「消費者起点」で描く成長戦略

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 いったいなぜ、そのような関係になれたのか。黒田さんは、「マーケティング部が5年前にできた、新しい部署であることも大きいのでは」と推測する。

マーケティング部は、現社長兼CEOの塚本浩康氏が、2018年に取締役副社長兼開発本部長になった際、「ものがあふれかえってそう簡単に売れない時代には、マーケットインのものづくりが必要だ」と開発本部の中に作った部署だ。 

タイミング的に他社より遅いと感じるかもしれないが、それ以前は、営業本部の企画部門がマーケティングに近い仕事を担当していた。営業本部の企画部門と製品開発部で商品を作り上げていたのだ。その企画部門出身のメンバーが、黒田さんを含めて今もマーケティングにいる。そして、製品開発部出身のメンバーも。 

こういった部署をまたいだ異動や昇進があるからこそ、お互いの部署を行き来し、相手の立場に立って物事を見ることができるのだという。

「もちろん、だからと言って手加減することはありません。マーケットインとプロダクトアウト、両方の考え方を融合することを意識して、しっかりと議論しています」(黒田さん)

組織づくりと商品づくりは大きく影響しあう

これは一般論であり、特定の企業について述べたものではないが、新しい部署が新設されることで、人材の交流が途切れる事例は少なくない。

例えば新設部署のトップが、抜擢人事で選出された際に、他の部署のトップからの反感を招くからだ。その結果、部署間の異動が極端に減少し、「今の仕事をずっとしたいわけじゃない」若手は会社を去る決断をすることもある。

また、退社しない社員の中にも、「同じ会社の人間なのに、別の島の人がなにを考えてるのかわからない」状態が生まれてしまう。組織の停滞感を生むのは、往々にして安易な人事差配であることも多いのだ。 

その点、六甲バターでは堅実なやり方で、新しい部署を作り、部署間の垣根を生まないままで、よりマーケットインなものづくりを進めてきた。中途入社でマーケティング部に配属された黒田さんの部下は、「社長や相談役、製造や営業の人と、こんなに距離が近いんですか」と驚いたそうだ。 

さて、さきほど、六甲バターは「開発先導型」企業であると言ったが、六甲バターが開発しているのは、商品だけではない。仕事の手法や店頭での売り方も開発している。 

そこで中編では、QBBチーズを全国に売りまくる営業マンたちの奮闘と、彼らに商品を託す開発部の想い、そして「開発先導型」企業の根底にあるアメーバ経営についてご紹介したい。 

笹間 聖子 フリーライター・編集者

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ささま・せいこ / Seiko Sasama

フリーライター、時々編集者。おもなジャンルはホテルビジネス、幼児教育、企業ストーリー。編集プロダクション2社を経て2019年に独立。ホテル業界専門誌で16年間執筆を続けており、ホテルと経営者の取材経験多数。「週刊ホテルレストラン」「ダイヤモンド・チェーンストアオンライン」「FQ Kids」などで執筆。企業のnote発信サポーター、ブックライターとしても活動。大阪在住。

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