QBB「チーズの種類多すぎ」を生む組織作りの秘訣 「開発先導型」と「消費者起点」で描く成長戦略
ライバルとなる大手乳業メーカー各社もプロセスチーズを扱ってはいるが、ほかの乳製品や、それ以外の食品も手掛ける兼業だ。
加えてQBBは、チーズのバラエティが異常に多い。例えば、年間2億本以上を売り上げる一番人気のベビーチーズだけでも、「定番」「プレミアム」「お酒のおつまみ」「日本の名産」と4シリーズ展開しており、合計17種類もある。
スライスチーズは12種類、6Pチーズは4種類プラス、デザートタイプが期間限定を含めて8種類。全シリーズを合わせると60種類以上にも及び、その多彩さは他の追随を許さない。今風の言葉で言えば、「チーズの種類多すぎ(褒め言葉)」なのだ。そして、この多くのチーズからお気に入りを選べる楽しさが、消費者に支持されている。
「開発先導型」で、挑戦をする組織風土を生む
これだけ種類が多い理由は、「新しいことへの挑戦を後押しする社風」にあるそうだ。
この社風は、前会長で現相談役の塚本哲夫氏が常々、「開発先導型活力企業であるべき」「進取の気性を持て」「常に新しいことに取り組んでいこう」などと、社員に語りかけていたことにはじまったという。
具体的にはどういうことか。たとえば新製品発売前に行われる、経営陣の承認を得る会議。この際に同社では基本、「おいしければ承認し、応援する」姿勢だそうだ。もちろん、最低限の利益率の目安は商品ごとにあるが、あえて明確な線引きは設けられていない。
それよりも、絶対に妥協できないのは味。味の担保と材料費のバランスについて、毎回徹底的に議論して、なんとか納得できる妥協点をみつけるという。だからこそ、クオリティが高く、なによりおいしい製品が生まれるのだ。
この姿勢は経営陣だけでなく、社内にも広く浸透している。2022年、ベビーチーズの「焦がしにんにく&ねぎ油風味」の開発の際は、工場から、「この商品を作ると工場全体がにんにく臭くなる」とクレームが出たそうだ。でも、味はどの部署の人が食べてもおいしいと感じられた。「ならば、匂いを気にせず売ろう」と即決したそうだ。
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