「大江戸温泉が高級化」いったい何が変わったのか 西日本を中心に展開する「湯快リゾート」と統合

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こうして見ると、食事に関しては何も言うべきことがないように思われるが、梅村氏は次のように話す。「我々がTAOYAで提供しているオールインクルーシブサービスは、未完成だ。海外の高級リゾートのオールインクルーシブサービスは、複数のレストランで何回でも食べられるし、プールサイドなどでカクテル等のドリンクもすべて自由に飲める」。

そのレベルのサービスに近づけるならば、相当に単価を上げる必要があると思うが、「TAOYAの施設数が現状よりも増えると(現状は6施設)、スケールメリットを生かした、より完成したサービスを提供できる可能性がある」とする。

課題もあるがコスパはいい

実は、筆者が大きな課題だと感じたのは、これに関連する部分である。大江戸の各ブランドは、スタンダードシリーズが「普段使いの宿」、Premiumシリーズはワンランク上のちょっとしたぜいたくが味わえる宿、そしてTAOYAは「ゆったりと、たおやかに。」をコンセプトとした、大人が特別な日に利用するようなホテルを目指している。

だが、実際にTAOYAに泊まると、子どもが走り回っていたりするのを見かける。梅村氏は「TAOYAは、他社の同じ水準のサービスを提供しているホテルと比べると、コスパよくご利用いただけると自負している。だが、価格を抑えている分、ブランドごとのお客様のご利用シーンの棲み分け等が、きちんとできておらず、目指すブランドイメージと現実にギャップが生じている部分がある」とし、「今後、ブランド戦略をブラッシュアップする必要性は感じている」という。

そして、「我々がベンチマークとすべきホテルチェーンはいくつかあるが、その中でブランド戦略が上手だと思うのが星野リゾートだ」と明かす。

星野リゾートは、若者をメインターゲットとするカジュアルホテルの「BEB(ベブ)」、都市型ホテルの「OMO(おも)」、温泉旅館の「界」、そして最上位ブランドの「星のや」と価格だけでなく、利用シーンごとのブランドの棲み分けをうまく行うなど、ブランド戦略に長けている。ただし、こうしたことをやるには、ブランド価値に見合ったスタッフの採用・育成なども不可欠であり、言うまでもなく一朝一夕にできることではない。

大江戸温泉物語は、さまざまな面でまだまだ伸び代があるブランドだと思う。しかし、間違いなく言えるのは、PremiumシリーズであれTAOYAであれ、現状、そこそこの値段で比較的満足度の高いサービスが受けられるという意味で、非常にコスパのいい宿だということだ。今後、どのようなブランドの方向性を目指すのか、企画・運営スタッフも頭を悩ませながら前へ進んでいる。

森川 天喜 旅行・鉄道作家、ジャーナリスト

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もりかわ あき / Aki Morikawa

現在、神奈川県観光協会理事、鎌倉ペンクラブ会員。旅行、鉄道、ホテル、都市開発など幅広いジャンルの取材記事を雑誌、オンライン問わず寄稿。メディア出演、連載多数。近著に『湘南モノレール50年の軌跡』(2023年5月 神奈川新聞社刊)、『かながわ鉄道廃線紀行』(2024年10月 神奈川新聞社刊)など

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