出張族がホテルを予約する際、悩みがちなのが朝食を付けるか否か。付けるとプラス1200円~2000円程度高くなる。でも、コンビニごはんは味気ない。そう考えて思いきって付けても、前日の疲れで朝食に起きるのが面倒な日もままある。できればその日の朝に食べるかを判断したい。
筆者を含め、出張族は得てしてワガママな生き物なわけだが、ビジネス的には「ワガママ」はつまり「ニーズ」。出張族に真摯に向き合って、成長を続けているビジネスホテルが「コンフォートホテル」だ。
「いつでも誰でも食べられる」朝食ビュッフェ
コンフォートホテルでは、朝食ビュッフェを宿泊者に無料提供している。しかも、予約時やチェックイン時の申告も不要だ。提供時間の6:30~9:30の間にライブラリーカフェに行けば、誰でも味わえる。
メニューは、ウィンナー、スクランブルエッグ、おかず3種、スープ、ライス、パン、フルーツ、旬を取り入れたサラダなど約26類。基本的には全ホテル共通だが、『コンフォートホテル函館』ならじゃがいもスープ、『コンフォートホテル浜松』ならうなぎごはんなど、地産地消のメニューが取り入れられているホテルもある。
また、季節替わりのスムージーも並んでおり、2024年7月からは、「ミックスベリーとヨーグルトのスムージー」「トマトのさっぱりスムージー」「ピーチとアセロラのスムージー」などを提供している。
同ホテルを展開する株式会社チョイスホテルズジャパンのブランドマーケティング課 堀早苗氏は朝食について、「世界45カ国以上でチョイスホテルズグループが提供する朝食のクオリティを担保しつつ、地域の味、日本の味も提供しています。この安心と地域性、両方を無料提供しているのが『コンフォートらしさ』で、そこを大切にすることが差別化につながっています」と説明する。
たしかに、「宿泊者が申告なしで食べられる無料朝食ビュッフェ」は現在珍しく、国内外のゲストから歓迎されるサービスだろう。筆者が利用した『コンフォートホテル東京東日本橋』も、朝食提供時間、会場であるライブラリーカフェはほぼ満席状態だった。そして、土地柄もあるのだろうが、うち7割をインバウンドが占めていた。
アーリーチェックインやクーポン配布で差別化
会員制度もユニークだ。まず無料で一般会員になり、公式サイトから予約すれば、14時チェックイン、11時チェックアウトのロングステイが可能となる。
大手チェーンの滞在時間と比較してみると、Aホテルは一般会員で11時チェックアウトはできるが、年間20泊して上位会員にならなければ、14時にチェックインできる会員にはなれない。Bホテルは、年間10万円以上利用して上位会員になることが、14時チェックインが可能な条件だ。11時チェックアウトをするためには、年間25万円以上を利用して、もう1ランク上の会員となる必要がある。
ビジネスホテル業界において、14時チェックインというのはそれだけ「選ばれた顧客にのみ与えられるもの」なわけだ。コンフォートホテルの、いい意味での敷居の低さがわかる。
加えて、コンフォートホテルでは、会員向けに多彩な特典を用意していることも特徴だ。ホテル独自の「choice(チョイス)」と呼ばれる単位を導入しており、220円(税込)使うごとに1choiceが貯まる。そして、100choice(2万2000円)貯まるごとに500円割引クーポンがもらえる仕組みになっている。
ほかにも、無料会員登録で200円クーポン、LINE登録で300円クーポン、季節限定で使える800円、1000円クーポン……など、とにかくクーポンをこまめに配布してリピーター獲得につなげているのだ。
堀氏によると、これらの特典のなかでも人気は、「ホテル制覇」でもらえるプレゼントだそうだ。「ホテル制覇」は、全国に73あるコンフォートブランドホテルのうち、異なるホテルに泊まれば、「5ホテル刻み」でプレゼントと引き換えられるクーポンがもらえるサービスだ。
プレゼントは折りたたみバッグ、サーモボトル、ワイヤレス充電器などのアイテム。最高で70ホテルを達成すると名前入りのクリスタルトロフィーが授与されるが、これを求めて制覇を目指しているファンも多数いるそうだ。出張族にとっては、コンプリートを目指したくなる趣向なのかもしれない。
ビール付きで24時間滞在できるゴールド会員
また300choice(6万6000円)が貯まると自動的に「GOLD会員」へのランクアップが待っている。そうなると、前編でも記載した通りライブラリーカフェが「宿泊せずとも、いつでも」使えるクーポンが配布されるのに加えて、11時チェックインが可能に。元々、公式サイトからの予約で11時チェックアウトになるため、最大24時間ステイが常にできることになる。
一方でGOLD会員には、これも公式サイトからの予約で、チェックイン時にビール(135ml)などのドリンクもしくはオリジナルグッズのプレゼント、2000円のバースデークーポン配布の特典もある。「ビールが付く24時間ステイ」となれば、出張族にとって、コンフォートホテルに傾く比重が大きくなって当然だ。
こうした数え切れないクーポンや特典は、どこかスーパーの戦略に似ている。筆者の自宅の近隣では、4つのスーパーが激戦を繰り広げている。だが、最も足が向くのはクーポンを配布し、アナログだがシールでポイントを貯められる店だ。同じ買うなら、少しでもお得なほうがいい。無料で食べられるもの、もらえるものがあればなおさらうれしい。コンフォートホテルも、同様の消費者意識をがっちりと掴んでいるといえそうだ。
さらに会員制度においては、会員の宿泊代金の0.5%に㈱チョイスホテルズジャパンからの出金も上乗せし、自然保護や学びの機会に寄付する取り組みも行われている。
フロリダのように? 明るくフレンドリーな接客
ホテルの良し悪しはサービスによっても大きく左右される。コンフォートホテルの接客について説明する前に、少しコンフォートホテルの歴史を紹介したい。コンフォートホテルは、オーナー会社である㈱グリーンズがスタートしたホテルブランドだ。
1999年に1号店として『コンフォートイン京都五条』を開業し、その後に子会社として誕生した㈱日本チョイスが、世界でコンフォートホテルを展開するホテルFCチェーン『チョイスホテルズインターナショナル』と2003年にマスターフランチャイズ契約を締結。そこから21年かけて、73軒(2024年7月30日時点)まで出店を拡大してきた。
チョイスホテルズインターナショナルはフロリダ発祥であり、これにちなんでスタッフには、「フロリダの太陽のような」明るく親しみやすい接客が求められている。そのためコンフォートホテルの接客は、肩肘張らずにフレンドリーで、スタッフが積極的に話しかけるスタイル。孤独な出張族に、一服の癒しをもたらしてくれている。
教育の基準になっているのは、ブランドコンセプト「Color your Journey. 旅に、実りを。」を行動指針に落とし込んだブランドブックと、日々の行動指針を書いた持ち歩けるクレドだ。
その内容は社外秘とのことだが、要約すると、「安心安全を基盤にしながら、快眠快適、朝食のバランスのよさという機能的価値と、旅の思い出などの情緒的価値を提供する」となるとのこと。一挙手一投足をマニュアル化するのではなく、サービスの際の精神性の共有を重視しているのだ。
たしかに、これまで紹介してきたコンフォートホテルの施設、サービスはすべてこれに該当している。そして通底しているのが、ブランドコンセプト「Color your Journey. 旅に、実りを。」だ。
それがぶれずに体現されていることが、出張族の心を離さない「実りある滞在」を実現しているのだと今回の取材、滞在を通じて実感した。
リブランドでさらなる成長へ
現在、㈱チョイスホテルズジャパンは、コンフォートホテル以外に、ロードサイドを中心に出店する「コンフォートイン」、女性を含むグループに向けたコンフォートホテルの派生ブランド「コンフォートホテルERA」、東京ディズニーリゾートを訪れるレジャーニーズに対応した快適性を備えるブランド「コンフォートスイーツ」を展開している。
2024年中には、ソラーレグループが所有していた「チサン イン」を賃借する形で「コンフォートイン」にリブランドし、順次22ホテルを開業予定だという。
円安を追い風に、急拡大を続ける同グループ。出張族のひとりとして、今後に注目していきたい。
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