利己的だった故・稲盛氏が失敗から学んだ経営術 30年に渡って支えた特命秘書が語る「氏の言葉」

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その結果、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献する」という経営理念を作り、経営の目的を利己的なものから利他的なものに変えたのです。

これが、稲盛さんの経営者としての器を一気に大きくする契機となりました。

稲盛さん自身、「全従業員の物心両面の幸福を追求する」という経営理念があり、自分は全従業員の幸福の実現のために必死に努力しているという自信があったので、「部下に嫌なことも命令できるようになった」と話していました。

リーダーは数字が読めなくてはいけない

先に挙げた5つの質問の最後にある「数字がわかりますか?」という問いは、経営において具体論がいかに大事かを教えています。つまり、経営者は人の心が読めるだけでなく、数字も読めなければならないのです。

『運命をひらく生き方ノート(約三十年、稲盛和夫氏のもとで学んだこと)』書影
『運命をひらく生き方ノート(約三十年、稲盛和夫氏のもとで学んだこと)』(致知出版社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

これも稲盛さんの京セラ創業時の経験から生まれた言葉でしょう。

技術者であった稲盛さんは、京セラ創業当初、経理も会計も何もわからなかったといいます。それでは経営はできないと心配になり、当時の経理部長に教えを請い、また独学でも学び、専門家にも負けないくらいの会計知識を身につけるのです。

その内容を記したのが稲盛さんのベストセラーの1つである『稲盛和夫の実学』(日経ビジネス人文庫)です。本の帯に「会計がわからんで経営ができるか!」とあるように、経営者は「数字がわかる」ことが不可欠なのです。

稲盛さんが若い聴衆に投げかけた「人の心が読めますか?」「部下から好かれていますか?」「人の心の苦しみ、楽しみがわかりますか?」「部下に嫌なことでも命令できますか?」「数字がわかりますか?」という5つの質問は、稲盛さん自身の若いときの経験から生まれたものであり、だからこそ説得力があるのだと私は感じ、感銘を受けたのです。

大田 嘉仁
おおた よしひと / Yoshihito Ohta

昭和29年鹿児島県生まれ。53年立命館大学卒業後、京セラ入社。平成2年米国ジョージ・ワシントン大学ビジネススクール修了(MBA取得)。秘書室長、取締役執行役員常務などを経て、22年日本航空会長補佐専務執行役員に就任(25年退任)。27年京セラコミュニケーションシステム代表取締役会長に就任。令和元年MTG取締役会長就任。現職は、MTG相談役、立命館大学評議員、鴻池運輸社外取締役、新日本科学顧問、日本産業推進機構特別顧問など。著書に『JALの奇跡』(致知出版社)、『稲盛和夫 明日からすぐ役立つ15の言葉』(三笠書房)などがある。

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