三菱電機「空調装置」、ドイツの鉄道なぜ大量採用? 「革新的」技術と業界内での立ち位置が強みに
車両ソフトウェアのアップデートもWi-Fiで自動的に行われ、従来のように車両基地で作業員が1両ずつソフトを入れ替えるという手間がない。「スマホのアプリを更新するようなもので、大幅な作業時間の短縮につながる」とモックアップ内に展示されたモニターを前にシーメンスの担当者が胸を張った。
客室には窓やドアの上部にさまざまな情報を表示するモニターを設置するほか、フリーWi-Fi、USB充電ポート、電源コンセントも備える。車内のLED照明は時間帯に合わせて輝度を変える。
「シーメンスさんのブースに行きましたか。中央のモックアップ車両に当社の空調装置が使われるんですよ」――。イノトランス会場内の三菱電機のブースで、担当者が教えてくれた。
三菱電機が開発した新たな空調装置がこの車両に導入される。契約金額は未公表だが1編成あたり15台の空調装置が取り付けられるので、90編成で1350台という大型ビジネスだ。イノトランス開幕の直前、9月19日に発表した。
採用の理由は「革新的技術」
なぜ、シーメンスは三菱電機の製品を採用したのだろうか。その理由の1つは新型車両のコンセプトにある。この車両にはデジタル技術の活用による消費電力や保守費用の抑制といった革新技術がふんだんに取り入れられる。そのため、空調装置にも革新的な技術の採用が求められた。
一般的な鉄道車両同様、この車両も空調装置の設置場所は屋根の上である。そのため、空調装置の形状も屋根の上に置いても空気抵抗がないように平たい形となっている。
鉄道用空調装置の課題は環境負荷が大きいことだ。かつてはクロロフルオロカーボンなどのフロンが空調装置の冷媒として広く使われていた。しかし、オゾン層を破壊する塩素分子を放出することから1996年に生産禁止となり、現在はR407C、R134aなどの代替フロンが鉄道車両用空調装置の冷媒として広く使用されている。しかし、これらはオゾン層破壊効果こそないものの、地球温暖化係数が高いため排出抑制が求められている。
そこで三菱電機が初めて採用したのがプロパンを原料としたR290という冷媒である。R290もオゾン破壊効果がゼロで、同社によれば地球温暖化係数はR407C、R134aなどの代替フロンと比べると約8万分の1という低レベルだという。
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