三菱電機「空調装置」、ドイツの鉄道なぜ大量採用? 「革新的」技術と業界内での立ち位置が強みに

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一方で、現行の代替フロンが不燃性であるのに対し、R290は可燃性であり、使用に際しては十分な安全対策が必要だ。そのため、「通常、空調装置の冷媒が漏れるのはロウ付け部分からだが、空調装置内の室内機部分にはいっさいロウ付けをしていない」(三菱電機広報)。従って「万が一、冷媒が漏れた場合も室外機部分からで、室外機部分は空調装置の外の外気に冷媒が放出される。車内に冷媒が漏洩しづらいという点で、リスクが最小化されている」(同)。また、小型冷凍サイクルを複数搭載することで1回路当たりの冷媒充填を減らすなどの仕組みも取り入れた。

R290の活用は空調装置がもたらす環境負荷を劇的に改善させるだけに、鉄道車両への活用について多くの企業が注目している。たとえば、ドイツの建設機械メーカー・リープヘルはスイスの中堅鉄道メーカー・シュタッドラーが製造するフィンランド向け車両に、また、アメリカの鉄道機器メーカー・ワブテックはアルストムが製造するノルウェー向け車両に、それぞれR290を使った空調装置を供給すると発表している。

一方で日本においては、三菱電機によれば「日本国内でR290を使用した鉄道車両用空調装置が採用された事例はない」とのことで、将来、日本でも同タイプの空調装置が登場する可能性もある。

三菱電機 空調装置
鉄道車両用R290空調装置(画像:三菱電機)

車両用空調装置に商機

空調装置のほか、主電動機、インバーター、ブレーキ制御装置、運行管理システムなど、鉄道車両に搭載されている電気機器類を製造する国内メーカーは三菱電機、日立製作所、東芝の重電3社が大手。さらに東洋電機製造や日本信号、京三製作所などの中堅メーカーもしのぎを削る。その筆頭が三菱電機である。

鉄道車両メーカー首位の日立は、車両と電機品のいずれも自社で製造しており、日立製の車両は電機品も日立製というケースが多い。一方、川崎重工業などほかの車両メーカーは車両組み立てが主体で、電機品の大半は他社からの調達だ。そこで頼りになるのが三菱電機。つまり同社は自身が車両メーカーではないからこそ、多くの車両メーカーと幅広く付き合うことができる。

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