解説者が「大谷翔平のモノマネ」でクビになった訳 米国の「キャンセルカルチャー」はどこへ向かう
これまで、他者のアクセントを真似るこうした「アクセント芸」は伝統的にエンターテインメントの王道と見なされてきたが、特に白人によるマイノリティのアクセント模倣は近年、大きな批判の対象になりうるため、舞台上でもほぼ披露されることがなくなった。
アメリカを席巻するキャンセル・カルチャー
不適切な言動のあった企業や個人、作品を社会的に抹殺しようという「キャンセル・カルチャー」の風潮が、今アメリカで大きな広がりを見せている。「キャンセル・カルチャー」という時流は日々形を変えながら、アメリカを覆い、また対立軸となって私たちの生活に大きな影響を及ぼしている。
「キャンセル・カルチャー」を考察する前に、その起点である「Woke Culture(ウォーク・カルチャー)」について触れる必要がある。
もともと「Woke」という言葉は「Wake(目覚める)」の黒人アクセントに由来し、1940年代にブラック・コミュニティの間で、人種差別に対し「目覚める」こと、すなわち「立ち向かう」ことを喚起する口語として用いられたのが始まりと言われている。
活字としても、公民権運動が盛り上がりを見せる1962年の時点ですでにメディアに登場し、黒人作家、ウィリアム・メルヴィン・ケリーが『ニューヨーク・タイムズ』誌に「“If Youʼre Woke You Dig It”(目覚めているなら、わかるはずだ)」と題した記事を寄せた。
以後、約半世紀にわたって日の目を浴びることのなかったこの語だが、2008年にミュージシャンのエリカ・バドゥが自身の楽曲『Master Teacher』内で「I stay woke」と歌ってからは、リバイバル的に使用されるようになった。
とりわけ2014年、黒人青年マイケル・ブラウンが警官に射殺された事件をきっかけに、ブラック・ライヴス・マター運動が全米で展開されると、多くの人々が「目覚め」た結果、連日「ウォーク」が用いられるようになった。
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